鏡のない世界で  3.1

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隕石のような衝撃を受けた日から、僕の日常は大きく変わった。

まず、土曜日は1日、独りきりになった。
デート日のルーティーンが、そこに嵌められたのだ。
どうやら男は社会人で、平日出勤のため、必然的に仕事明けの土曜にゆっくり会うようになったらしい。
広告代理店務めの営業職、背は178センチで細身だが引き締まった身体、優しい顔立ちと言動で、営業成績も申し分ないという、彼女のフィルターが入ってるにしても、なかなかの好条件だ。まぁ彼女の言葉だけで直接見たことはないが。
平日は会えない分、夕食と入浴を済ませた後に1時間ほど電話をするのも日課になった。
付き合いたての2人だ、話す内容など溢れるほどにあり、潤いに満ちた笑い声が部屋中に広がる。
僕と2人で居る時の空気とは、また違った色だった。
正直、それを吸い込むのが苦しかった。
眼の前で繰り広げられる初々しい往来、桃の花が浮かんだような声。どんな顔をしているかは、とても見れない。
土曜日以外は変わらず一緒に居られているが、杏奈との距離は随分と遠くなってしまったように感じる。
僕の心は一向に落としどころを見つけられないまま、月日だけが流れていた。

そして昨夜、ついに彼女は帰ってこなかった。


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