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「友がいるのに」から「友がいるから」へ


 私は大学時代、アメリカの小さな大学に交換留学をしました。そこで、パレスチナ出身の友達が3人できました。帰国後も時々連絡を取ってきた姉妹はクリスチャンで、大学での学びを終えて今はパレスチナ(西岸地区)に住んでいます。メッセージのやり取りをすると、「早くまた会いたいね。神さまの恵みがありますように!」というような内容を、キラキラしたハートの絵文字とともに送ってくれて、私も同じように返します。とてもあたたかい友人たちです。

 私はそんな大切な友人たちが生まれ育ったパレスチナのことを、全然知りませんでした。実は、一緒にアメリカにいるとき、友人たちは、子どもの頃からイスラエルの占領下におかれたパレスチナで、怖い思いをしたことがあると語ってくれたことがありました。前から、SNSでパレスチナのことを発信してくれていました。2023年の10月以降、その友人たちの発信も今まで以上に多くなり、様子が変わりました。それでようやく、私はちゃんと知ろうとするようになったのです。情報をまとめて発信してくれる人がいて、最初は英語を中心に、徐々に日本語でも情報が得られるようになっていきました。これまで70年以上も、そこに住んでいる人たちの家を壊し、人を傷つけ殺し、土地も文化も命も奪うということが続けられてきたということを、私は知ろうとしていませんでした。

 立場を表明することには、こわさもありました。まずは、起きていることを理解しようとつとめました。そして、今起きていることはやはり間違っていると感じました。虐殺反対と言わなければ、虐殺賛成ということになってしまうと思いました。多くの「一般の」市民が殺され、生活が奪われ、またその殺している側を支援する大きな力があります。今度はいつ、自分たちが殺される側になってもおかしくない、そのような世界だと思います。

 しかし、そこまで思って、それも間違っていないけれど、今の私が暮らしている環境は、多くの人たちの犠牲の上に成り立っていることを思い出すのです。私も、虐殺を支援している社会につながっています。長期的には自分もいつ殺されるか分からない側になりうるけれど、今の自分は殺す側の方が(もちろん望まないけれど)近いのだと思わされます。だからいっそう、声をあげたいです。

 私は、子どもたちと接する仕事をしています。目の前に子どもたちがいるときは、希望がそこにあるような気がします。私も子どもたちも、これから何だってできるし、すてきな世界を作っていく仲間になれると信じたい、という気持ちでいます。一方で、命を、未来を奪われる子どもたちがいます。「子どもたちを大切にしよう」「命を大切にしよう」というのは世界共通ではないのかと、絶望的な気持ちになることもよくあります。

 でも、だからこそ、必ず世界は変えられるのだと信じて、行動し続けたいです。私は毎日、arab.orgというサイトでパレスチナ支援につながるクリックをしています。これしかできない日も多くあります。情報はもちろん追いきれていないし、イベントにももっと参加したいけれど、体力や時間には限りがあります。それでも、自分の立場を表明し(虐殺反対、差別反対、その他いろいろ)、オンラインや紙の署名に賛同し、もしできたらイベントや寄付の活動に参加していくことは、少しずつならできると思います。先日、私と一緒に紙の署名に参加してくれた人たちには、SNSを使わない人も多くいました。そのような人にこそ、この冊子をお届けしたいです。まずはこういう話ができるという安心感も大きいです。実は近くに仲間はたくさんいます。この冊子を渡せる、一緒に読める仲間を見つけていただけたら嬉しいです。  



りす
15年ほど教会に通ってきて、最近洗礼を受けたキリスト者(クリスチャン)です。英語の教員として働いています。話すことと音楽が好きです。環境も人も傷つけない生活と、祈りつつ人を愛する人になることを目指しています。



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