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記憶のラプソディ


混み合っている映画館を
避けているうちに

見たいと思っている映画が
始まって

三つ目の週末に
さしかかってしまった。

明日は土曜日か。

平日の午後だって
十分時間があるというのに

グズグズするうちに
夜になってしまい

会社帰りの人たちで
賑わう時間になってしまっては
諦めること何日?

今夜は金曜日の夜、
なんとなく血が騒いだのか

わざわざ街に出ては
行きつけのフレンチレストランで
食事をした後

ふと思い立って
そこからさらにタクシーで
三千円かけては

六本木ヒルズまでやってきた。


骨折を機に
母や妹の住む場所の
近くに引っ越したのだが

ライフスタイルは
早々変わるものではない。

着いたのは23時30分。

23時45分からの会に
ちょうどよかった。


そうだ。

クイーンだ。

ボヘミアンラプソディだ。

ここ三週間、
毎日のように誰かの
興奮をまとった投稿が
Facebookに上がってくるたびに

早く見に行きたいという
思いが現れつつも

行動が遅いのは
いつものこと。

とにかく私は都心中央での
その映画の上映中に間に合い、

無事思いを遂げることが
できたのだから、

なんの問題があるだろう。


六本木ヒルズの映画館に
行くための長い階段を
あえて登ることを選ぶと

ボヘミアンラブソディを
見てきた人たちだろう、

やっぱり歌ってしまうんだな、

微笑ましい気持ちで
彼らを眺めながらも
運動不足の足と肺と心臓への負担を
感じずにはいられなかった。

私はタクシーの中で
ポチって予約したプレミアムシートを
少し上がった息のまま
機械を使って発券し、

ポップコーンとコカコーラの
列に並んだ。


映画を見るときに
ポップコーンを食べる

というのは一体
誰が発明したのだろう。

アメリカ人に決まっている。

アメリカが大好きで
感謝しまくっている癖に

アメリカ人の持つ
ある種のガサツさのようなものを
欧州人のようなフリして
少し皮肉る私は、

日本生まれの国籍日本人である。


私は多分飲まないであろう
コーヒーを一杯、
それからミネラルウォーターを買って

映画のCMの鳴る
シアター2へと入った。


後ろに誰もいない
左側の一番端に選んだシートへと
身を沈める。

それから電気が消えるのを待って
スエードのロングブーツを
ゆっくりと脱ぐ。

半径数メートル
誰もいないし。

あとはもう映画の世界へと
没頭するだけだ。

始まった途端
大きすぎる音量に圧倒されては
かろうじて持っていた
ポケットティッシュの一枚を
取り出しては耳にゆるく詰める。

耳栓だとセリフが聞き取りづらいから
ティッシュくらいがちょうどいいのだ。


クイーンの曲を
はじめて聞いたのは中学生の時だった。

この映画のタイトル

「ボヘミアンラブソディ」

当時母が経営していた
ディスコというかパブというか
生のバンドが入っては
踊れる店で

フィリピンから来たバンドが
演奏していたのだ。

「ママ〜」

という衝撃的な
声とフレーズが飛び込んでくる

このこれまで聞いたことのなかった
ようなこの変わった曲は

私をすぐに虜にした。

私は学校の帰りにその店に
寄っては、

バンドがリハーサルをする
その曲を聴くのが
大好きだった。

そのバンドの一人
ベーシストは

まだ制服姿だった私に
密かに恋をしているのを
私はなぜか知っていた。

彼の天然パーマに人懐っこい笑顔が
OLたちを虜にしていたと
聞いたのはずっと後だ。


ひとたび映画が始まると
私の記憶は大人しくなり

個人的にはこれまで
全く興味のなかった
フレディ・マーキュリーと言う
人に自己投影しては共感し、

そうして興奮と涙と
感動のうちに

映画は終わった。


私が心に残った言葉は
多くの人が心に残ったそれとは
違ったものだった。

その言葉はなんどか
タイムラインで見かけたが
ちょうどそのセリフになったとき

できれば先に知りたくはなかった
と心から思った。

感動半減だったから。

ああこれだ!

と言う思考に邪魔されて(させて)
そのままを受け取れなかったから。

だから私もここで
何が私の心に一番残ったセリフかは
言わない。

そしてそのセリフが一番
心に残ったことで
自分のツボ、が

改めて自分が世界に与えたいものに
繋がっていることに
気づいては嬉しくなった。

やっぱりそこなんだ。

それは私が
歌手として歌っていることや
ヒーラーとしてやっていることなど

私が生きていることの意味と
まっすぐ繋がっていた。

うん。

映画のエンドロールが
終わっては

すでにあちこちに散らばった
マフラーやカーディガーンや
バッグやらを拾い集めては

帰り支度をしながら
映画で味わった感覚を反芻しながら
一人微笑んだ。


さてどうしよう。

お腹は空いていなかったし
お酒も飲みたくなかったが
すぐにタクシーに乗る気にも
なれなかった。

ヒルズを出て
坂を降りたところにある
ツタヤ&スタバが

朝の4時までやっていることを
思い出した。

眠れない夜
眠りたくない夜

一人でいたい夜
一人ででいたくない夜

私は時々
ここに来て朝まで過ごした。

一年に2度か、3度か。


そして深夜に
起きている人たちの
営みと

ただ一緒にいたり
こうして書き物を
したりして過ごすのだ。

時計は2時回っているのに
スタバは8割ほど席が
埋まっていた。

本を読む人、
コンピューターに向かう人、

クラブ帰りっぽい人、
ウトウトと眠っている人、

デートらしき人たち、
男同士、
4人組の若き美人たち。

様々な人がいる。

朝の4時までやっている
スタバがあって、

そこが実は夜な夜な
静かに賑わっているなんて
知っている人は

FB友達には何人くらい
いるだろう。

世界は本当に本当に広いのだ!
(大げさ。笑)


そう。

私はけやき坂の
スタバにいて
マックに向かって
キーボードを打っている。

起きているかも
知れない、

寝ているかも知れない、

あなたが読んでくれることを
想定して。


映画の話をするはずが

こんなことになってしまった。

これからたまに
こんな風に誰にも役に立たない
でも自分が書いてて楽しいことを
書いて行こうと思います。

どうぞよろしくお願いします。

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