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コロナで逆転

堂ヶ島の遊歩道から、天窓洞をのぞき込んだ。地面が陥没した後のような大きな穴の、かなり下の方に、水面が見えた。水面は、穏やかで、黒くて、それだけだった。その水面が、洞窟を通じて、外の海につながっている、というのを、想像するのは難しかった。普段は開いていないマンホールが開いていて、そこから下水をのぞいている、という方が、想像しやすかった。
遊歩道を回って、駐車場に戻るときに、遊覧船のチケット売り場に立ち寄った。次に来た時のために、所要時間と値段を調べるつもりだった。パンフレットを手に取ると、窓口の人が、今は、コロナのせいで、一番短いルートだけになっていて、15分おきに遊覧船が出る、と説明してくれた。所要時間は20分。時計を見た。時間には、余裕があった。予定を変更して、遊覧船に乗ることにした。
遊覧船は、堂ヶ島の近くの海沿いをぐるっと回ってから、洞窟へと向かった。船で、暗い洞窟に入っていくと、向こう側に、上から光が降り注いで、そこだけ明るく反射している水面が見えた。その、明るい水面のところに船が到着した。さっき遊歩道から覗いていた穴を、下から見上げた。同じ場所とは思えないくらいに、見える景色が違った。天窓洞は、やっぱり、下から見るものだ。遊覧船に乗って良かった。所要時間が長いだろうと思って、ツーリングの予定には組み込んでいなかった。でも、待ち時間込みで、30分前後で利用できるくらい手軽だと知っていたら、最初から予定に入れていた。
でも、待ち時間込みで30分、という手軽さは、コロナのせいだ。コロナには、いつも困らされてばかりだけど、たまには、こんなふうに、いいこともある。観光客そのものが減っているので、遊覧船は、確実に売り上げが落ちているだろうから、いいこと、なんて気楽に言ってはいけないんだろうけど、それでも、もしかしたら、15分おきに20分コースの遊覧船を出した方が、長いコースと織り交ぜるより、客の回転が早くて利用者も増えて、売り上げが上がりそうだ、という、発見が、あったかもしれない。できれば、そんなことが、あってほしい。コロナのせいで、悪くなることばかりじゃ、つまらない。

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