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マスツーリング

久能山東照宮と日本平を観光した後は、薩埵峠から、富士山のふもとを東に向かった。
十里木高原展望台のあるR459は、走りやすい、気持ちの良い道だった。富士山には何回かツーリングに来たことがあるけれど、いつも富士山スカイラインばかりだった。一本南側のR459は、走ったことがなかった。
以前、何回か富士山をツーリングした時は、友達と一緒だった。昔は、ツーリングといえば、友達と一緒に行くものだった。今は、日帰りでも、誰かと一緒にツーリングに行こう、とは思わない。バイクを止めて休憩した時に、誰かに話しかけられる、と想像するだけで、少し気が重くなる。人から話しかけられることを想像すると気が重くなる、なんて、あまり健康的ではない気がする。心が風邪をひく一歩手前くらいの、かなり不健康なイメージだ。でも、ツーリングをしている間、ずっと一人でいると、気が楽になるのは事実だ。自分に都合のいいように解釈すると、ツーリング中の一人の時間の方が気楽になれるのだから、自分にとってはそっちの方が健全で、普段の、人と話をしないといけない環境の方が、無理をしていて不健全、ということになる。そういえば、仕事中でも、話しかけられると、ため息が出そうになる。これは、ちょっと意味が違うかもしれないけど。
裾野を抜けて、芦ノ湖スカイラインに入った。久しぶりに見る景色だった。富士山スカイラインから御殿場に抜けて、箱根スカイラインから芦ノ湖スカイライン、というルートも、友達と何回か通った。御殿場は、いつも渋滞していた。今回のルートは、R459経由で、裾野から芦ノ湖スカイラインなので、御殿場は通らなかった。このルートは、道路が空いていて、走りやすかった。
芦ノ湖スカイラインには、芦ノ湖が見える駐車場があったのを思い出した。そこで休憩することにした。覚えていた通りのところに、駐車場があった。
昔の自分には、一人でツーリングに行く、という発想そのものがなかった。今は、友達とツーリングに行く、という、選択肢はあるけど、選んでいない。もし、昔の自分に、一人でツーリングに行く、という、選択肢があったら、どうしていただろう。あのころ、休憩のたびに、とりとめのないダラダラした話が続くことに、少しイライラしていたことを思い出した。

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