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何もない砂浜

海沿いの細い道を進んで、道が行き止まりになったところが、百名ビーチの入口だった。周りには、何もなかった。お店も、駐車場すらなかった。
そんな、何もない百名ビーチに来て、何をするのか。
できることは、海を眺めるか、乗馬ぐらいだ。
百名ビーチの入口の、行き止まりになった道路の先には、車では入れない細い山道が続いていた。バイクを止めて、ヘルメットを脱いでいたら、その山道の方から、ガサガサ、と大きな音が聞こえた。振り向くと、山道から、馬が二頭現れた。
予想できないところから馬が突然出現する、という経験をした人は、ほとんどいないと思うので、教えてあげます。あれはね、とっても、びっくりするよ。
そんな、海を眺めるか、乗馬をするしかない百名ビーチで、馬に乗っていない私は、砂浜に落ちていた流木の上に腰を下ろして、海を眺めた。見事に、何もなかった。沖縄で、こんなに観光地の気配がしない場所は、初めてだった。
穏やかな波が寄せては返す音を聞いて、何も考えずに、ぼけー、とした。ボケーッ、ではない。「ー」の後に、「っ」が、入っていないところが、ポイントだ。ゆるく漏れた息を止めるような、力を入れることは、しない。ただ、呆けた。ぎりぎりよだれは垂れていないくらい、弛緩した。
ぼけーとするか、乗馬しか、やることのない白い砂浜で、乗馬をしている人たちは、向こうの方で、波打ち際を歩いていた。気持ちよさそうだった。こっちはこっちで、ただ座っているだけだけど、それはそれで、心地よかった。
今日のこの後の予定とか、明日の久米島行きのフェリーとか、どうでもよくなってきた。

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