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休憩は難しい

竜串海岸から高茂岬までは85km。そこから遊子水荷浦の段畑まで70km。その間には、観光スポットはない。
あらかじめ休憩するところを決めておかないとうまく休憩できないのは、いつまでたっても治らない。長い距離を走って疲れると判断力が鈍って、休憩するという判断ができなくなって、そのまま走ってさらに疲れると、自分の状態も把握できなくなって、疲れていること自体が自覚できなくなるから、少しでも疲れたと思ったらこまめに休憩しないといけない。理屈はわかっている。でも、できないんだ。少し疲れたから、そろそろ休憩したい、とは思う。でも、せっかくだから、景色の良いところで休憩したい、と、せこいことを考えていると、ここはわりといいけど、もう少し景色が良いところもありそうだから、と通り過ぎて、ここは悪くないけどさっきの方が良かったから、と通り過ぎて、とやってしまって、いつまでたっても休憩できない。
今回も、そうやって、R56を何も考えずに走り続けた。何も考えずに走る、というのは、ツーリングの一番の魅力だけど、それは、目に見える景色と、風を感じる感覚と、心地よいエンジンの音にすべてを持っていかれて、何も考えなくても満たされた状態になることであって、ほどほどの交通量の単調な国道を前の車のリアウインドウだけを見て機械的に前に進んでいる、この時の状態のことではない。この時のは、どっちかというと、せっかくの何も考えずに走れるチャンスを何も考えないで無駄にしている、もったいない状態だ。そんなもったいないことをしていると、ふと、ツーリングに出発する前の日にやりかけていた仕事のことを思い出した。そういえばあれ、あっちにしようと思っていたけど、こっちにした方がよさそうだな。
ん?
俺は、今、何をしていた。この、年に一度の、大切なロングツーリングの最中に、何をした。仕事か。仕事のことを考えたのか。それはあれか、旅先のリラックスした環境だと発想力が高まってクリエイティブになれる、とか、そういうのか。そんなもん、ウソだ。もし、本当だとしても、そんなもんいらん。仕事中に抜群なツーリングのルートを思いつくのはいいけれど、逆はダメだ。一瞬でも仕事のことを考えた自分に腹が立った。だいたい、ここはどこだ。前の車にボケーッとついて走ってたら、途中の景色が全然思い出せないぞ。人の計画したツーリングで人の後ろを走るだけだと、ツーリングのことを何も思い出せない、というのは知ってたけど、自分で計画したツーリングでも、知らない人の車の後ろをボケーッと走っていると、同じことになるとは知らなかった。
次、バイクを止められそうなところがあったら、景色がいまいちでも休憩だ。

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