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美ら海水族館のおすすめ

美ら海水族館というと、ジンベイザメの大水槽ですね。実際、大変すばらしい。でも、他にも、いろいろあります。サンゴ礁と熱帯魚とか、サメとか、チンアナゴとか、クラゲとか。
その中で、私のおすすめは、何かというと、イカです。
イカはね、いいですよ。あの人たち、頭がいい。見たら、すぐにわかる。魚は、あまり表情がないし、餌以外のことを何か考えているようには見えないけれど、イカは、明らかに意思がある。表情もある。
イカは、たたずまいも、いい。彼らは、魚と違って、水の中で、ホバリングができる。魚が泳ぐ姿が、空を飛ぶ鳥のようだとすると、イカは、風船みたいだ。5匹くらいの、真っ白なイカが、思い思いの場所で、好きな方向を向いて、ふんわりと、浮かんでいる。そのうちの一匹が、体の横の小さいヒレを、ひらひらさせて、目の前をゆっくりと横切っていく。見ていて、癒される。抱っこしたくなる。
そんなイカの水槽を見たのは、開館直後だった。そのまま水族館の中を一通り見て、大水槽をじっくりと堪能していると、遠足の子供たちが来て、水族館がにぎやかになった。そろそろ行くか、と思ったときに、最後に、もう一回、あの愛おしいイカちゃん達が見たくなった。
水槽の前に戻ったら、私の知っているイカちゃん達は、そこにはいなかった。イカはいたけれど、私の知っている、あの愛らしいイカちゃんじゃなかった。まず、真っ白だったはずの体の色が、茶色になっていた。どうやら、水槽の中の岩の色に擬態をしているらしい。そして、全員が、こっちを向いていた。イカの正面は、足が生えている方だ、というのを、この時、初めて知った。目線は、明らかに、水槽の外に向けられていた。そして、その目つきは、明らかに、鋭かった。機嫌が悪いらしかった。一番手前にいる一匹が、体の色を、一瞬、黄色にして、茶色に戻した。
なんだこれ、カッコイー。
嫌いな子供に囲まれてストレスを受けているイカには申し訳ないけれど、これはこれで、よかった。全員が同じ方向に向いていると、チームみたいだった。体の色が無機質な岩の色になっているので、重厚感があった。さっきは、風船みたいにプカプカ浮いているように見えたけど、今は、敵艦隊の接近を検知した宇宙艦隊が、敵に向けて一斉射撃をするために、艦の向きを揃えて、待機しているようだった。だいたい、機嫌が悪くなると、体の色が変わるって、何そのかっこいい設定。一瞬だけ、違う色にする、とかもできるって、かっこよすぎる。彼は、不機嫌そうに、体の色を、一瞬黄色に変えた、って、SFに出てくるやつだ。
さっきは、思い思いの向きを向いていて目線が合わなかったけど、今は明らかにこっちを向いているので、目が合った。意思疎通ができそうな気がした。一番手前のイカちゃんに、私は、君のことが好きだ、と発信してみた。イカちゃんは、こっちの方をじっと見て、目をそらさなかった。興味を持ってくれているような気がした。3分くらいがんばってみた。でも、進展はなかった。きっと、周りがうるさすぎたんだ。もし、次の機会があれば、開館直後の真っ白なイカと会話をするべく、がんばってみたい。

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