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狭い道

郡上八幡から、R256で東に向かった。この辺りのことは、あまり、マップルには載っていなかった。金山巨石群、というところがあったので、寄ってみた。大きな石が、10個ぐらいある、山奥の、静かなところだった。
そこから、県道86を南に向かった。県道86から西に入って、横谷峡四つの滝、に向かった。
一つ目の滝の駐車場には、車がたくさん止まっていた。こんなにたくさん観光客が来るところだとは思っていなかった。バイクを止めた。駐車場の端の車から、水着を着た子供たちが降りてきた。
滝つぼは、家族連れでいっぱいだった。市営プールみたいだった。今まで、滝は、いくつか見てきたけれど、滝つぼのことを、そういうふうに見たことはなかった。今日は、8月13日。滝つぼの使い方は、もちろん、子供たちの方が正しい。市街地で渋滞にはまったら、バイクの温度計が45℃になるそんな日に、ジーンズにブーツで滝つぼに来ているおじさんの方が、変だ。君たちを見たら、おじさんも水浴びがしたくなった。でも、おじさんが一人で来て、水浴びを始めたら、やっぱり、それも変なんだ。場違いなおじさんは、写真を一枚撮って、少しだけ滝を眺めて、駐車場に戻った。
一つ目の滝を過ぎると、道が狭くなった。車が一台、ぎりぎり通れるくらいだった。バイクでも、対向車が来たら、少し困ったことになりそうだった。道路の真ん中には、砂利が浮いていた。
二つ目の滝には、すぐに着いた。駐車場はなかった。滝の入口のところが、少しだけ、道幅が広くなっていた。さっきの道路の様子だと、この道を通る車は、少なさそうだった。道の端に、バイクを止めた。二つ目の滝にも、水浴びをしている人たちがいた。外人だった。大人ばかりで、6人ぐらいだった。見た目からは、南米の方の人たちみたいだった。滝に打たれながら、崖をよじ登って、奇声を上げていた。崖の岩は尖っていて、手を滑らせたら、無事では済まなさそうだった。ここでは、水浴びしたくはならなかった。写真を一枚撮って、すぐに、バイクのところに戻った。
三つ目の滝に向かうと、道は、さらに細くなった。途中で、2台の車とすれ違った。両方とも、大きなワンボックスカーだった。1台は、初心者マークが貼ってあった。運転しているのは若者だった。沈没しかけの船を操縦している船長のような表情をしていた。もう1台は、初心者マークがなくて、運転しているのは、おじさんだった。表情は、似たようなものだった。あの2台が、向かい合って進んでいたら、どうなるのか、想像できなかった。
三つ目の滝のところにも、駐車場はなかった。さっきと同じように、バイクを道の端に止めた。そんな道の先にあるので、三つ目の滝には、誰もいなかった。やっと、静かな滝を見ることができた。ゆっくりしようとした。さっきの大きなワンボックスと、道端に止めたバイクが気になった。ゆっくりする気になれなかった。写真を撮って、バイクのところに戻った。
四つ目の滝に向かうと、徐々に道が広くなった。滝のところには、駐車場があった。道は、四つ目の滝の先で、広い道につながって、四つ目の滝、というより、反対側の一つ目の滝だった。この滝は、四つのうちで一番落差が大きくて、一番立派だった。反対側の一つ目の滝なのに、滝つぼで水浴びをしている家族連れはいなかった。静かなところで、滝を眺めて、ゆっくりと休憩した。駐車場に戻る途中で、浮き輪を持った、水着姿の子供たちとすれ違った。
バイクのところに戻って、ジャケットに手を通していると、駐車場の看板の前に立っている家族連れの会話が聞こえた。そこには、四つの滝の地図が書いてあった。奥さんが、次の滝を見に行きたい、と言っていた。ハンドルを握る旦那さんは、あまり行きたくなさそうだった。
突然声をかけたら驚かれるかも、と思ったけど、やめた方がいい、と伝えた。
 

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