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フラミンゴの耐久性

スマホで、明日の天気予報を見た。ツーリングを始めて五日目。今日まで、雨が降らなかった。その幸運も、今日で終わりらしかった。明日は、八幡平アスピーテラインを走る予定だった。二年前に来たとき、八幡平アスピーテラインは、霧の中で何も見えなかった。今回も、良い景色は難しそうだった。それはそれで仕方がない。割り切って、明日の出発の準備をした。荷物を片付けて、ブーツを手に取った。
ブーツ、と言っているけれど、実際は長靴だ。長靴みたいにチャチいブーツ、という意味ではなくて、本当に、ゴムの長靴。ゴムで一体成型された、ブーツの形をしたゴム長。バイク専用の長靴で、商品名はフラミンゴ。
4年前、最初のロングツーリングの時に、Gベクター、というブーツを買った。ちょっと高かったけど、履き心地もよくて、完全防水で、快適だった。良いものを買った、つもりだった。次のツーリングで、雨の中を走ったら、水がたっぷりと浸みこんできた。1年持たなかった。電化製品なら1年保証があるけど、ブーツの防水性能には1年保証はない。でも、1年持たないのは、どうかと思った。
この時、ブーツの中に染みこんだ雨で足をズブズブに濡らして、みじめな気持ちで走りつつ、次のブーツをどうするか考えたときに、あることに気が付いた。ブーツの防水性能が維持されているかどうかは、雨の中を走らないとわからない。そして、バイク通勤をしない私の場合、雨の中を走るのは、ロングツーリングの時しかない。つまり、ブーツの防水がだめになっているから買い換えないといけないことに気が付くのは、ツーリングで雨に降られて足をズブズブに濡れてから、ということになる。
これは、何か、間違っている。
防水のブーツを履いているがゆえに、いつかは必ず足がズブズブになる、というのは、変な話だ。何か、うまいやり方がありそうな気がしたけど、その方法はわからなかった。
わからないまま、次のブーツを買いに行った。そのときに見つけたのが、フラミンゴだった。ゴム長靴なら、穴さえ開いていなければ、防水性能は、完璧のはず。穴が開いているかどうかは、見ればわかるから、防水されているかどうかは、ツーリングに行く前に、見ればわかる。
フラミンゴのデビュー戦は、2年前のツーリングだった。前回、霧の中のアスピーテラインを走ったときも、履いていた。防水性能は、予想通り完璧だった。泥でぬかるんだ奥入瀬渓流の遊歩道を歩いたときは、普通のブーツより、ゴム長の方が頼もしかった。
手に取った長靴を、しげしげと眺めた。2年も経つと、傷だらけだ。たくさん、旅をした証だ。ほら、左の甲のところにも、新しい傷が。3cmほど、ひび割れている。よく見ると、貫通していた。ほら、普通のブーツだったら、防水できなくなっているのがわからないけれど、フラミンゴだから、すぐわかる。長靴は、やっぱり便利だな。でも、今、そんなことがわかっても、このままだと、明日、ここから雨がジャブジャブ入ってきちゃうぞ。すぐわかったけど、便利なのか、これ。
気になって、他のところも見てみた。くるぶしのあたりのゴムも、劣化してひび割れていた。右のくるぶしも、同じようにひび割れていた。おかしいな、前のツーリングが終わって手入れをしたときには、大丈夫だったのに。ゴムって、こんなに急に劣化するのか。
明日は雨で、長靴には大きな穴が開いています。こまりましたさてどうしよう。できる範囲で、修理するしかない。
荷物の中から、アロンアルファを取り出した。左の甲の、大きなひび割れを張り合わせた。見た目は、うまくふさがった。小さな穴が開いているかどうかは、見てもわからなかった。くるぶしのひび割れは、上からガムテープを貼った。海南戦でねん挫した時の赤木のテーピングのように、何重もぐるぐる巻きにした。雨で足が濡れる前に修理ができたのは、防水できていないのが見た目でわかるフラミンゴのおかげかもしれないけれど、うまく修理ができたかどうかは、雨の中を走ってみないとわからなかった。フラミンゴは、2年持たない、というのはわかった。
防水のブーツを履いているがゆえに、いつかは必ず足がズブズブになる、というのは、変な話だ。何か、うまいやり方がありそうな気がするけど、その方法は、いまだにわからない。

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