いいお土産

ツーリングのお土産は、難しい。
せっかく、いろんなところを訪れるので、その場所に来た証になるような記念品が欲しい、と思うものの、これ、というのは、なかなか見つからない。かさばるもの、つぶれやすいもの、濡れたら困るものは買えないし、食べ物は食べたら消えてしまって記念にならないし、かといって、置物なんか買ったところで、それ、飾ってうれしいのか、という話だ。それでも、何かないかと思って、いつも、お土産屋の中をウロウロする。
岩鋳鉄器館は、南部鉄器のメーカー直販店のようなところなので、何かお土産を買うつもりだった。でも、南部鉄器と言えば、鉄瓶だ。かさばるし、重いし、値段も高いし、家で使うのも難しそうだし、ツーリング中のお土産、という観点で見ると、良いものが見つかることは、あまり期待していなかった。
南部鉄器というと、黒い鉄瓶しかないと思っていたけれど、色鮮やかなものがいろいろあった。見ているだけでも楽しかった。でも、やっぱりかさばるし、値段も高かった。店の真ん中に、壁で囲われたようなスペースがあった。中には、風鈴がつるしてあった。
風鈴は、ツーリングのお土産に、ぴったりだった。パッケージが小さくて、値段も手ごろ。鉄製なので、少しくらい手荒に扱っても壊れない。しかも、南部鉄器。
風鈴も、いろんな色のものがあった。鳴らしてみた。涼し気な、いい音がした。いろいろ鳴らしてみると、風鈴の形によって、音色が違った。散々迷って、水色の風鈴と、黒と金の風鈴の２つに絞った。ここから先が決まらなかった。どっちにするか、５分ほど悩んだあとで、一つしか買えないわけではないことに気が付いて、両方買った。
ツーリングが終わって、家に帰って箱を開けたとき、ものすごくうれしかった。妻にさんざん自慢した。水色の風鈴は、妻にプレゼントした。今は、部屋のドアにつけて、ドアベル代わりに使っている。お気に入りのツーリングのお土産が、普段の生活でも使える、というのは、いいものです。