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できなくなったこと

御前崎灯台、という看板に従って、細い道を進み、角を曲がった。いきなり、目の前に、灯台が現れた。灯台の下の小さな駐車場にバイクを止めて、灯台を見上げた。
思っていたのと違った。
御前崎灯台は、以前にも、何回か来た。地図で見ると海沿いに見えるR150は、実は海から少し離れていて、海が全然見えないまま走って、途中で県道に入ってしばらく進むと、灯台の手前数キロで海沿いに出る、というルートを覚えていた。変化の少ない、平らでまっすぐな道を走った後で海沿いに出て、海岸と、その先の御前崎灯台が見えて、いよいよツーリングが始まった、と気分が盛り上がる、はずだった。
だが、どうだろう。
海沿いは全く通らずに、灯台に着いてしまった。海は、まだ見ていなかった。灯台は、小高い丘の上にあった。灯台の向こう側に回って、そこから見下ろすと、海と、走るはずだった海沿いの道と、休憩する予定だった駐車場が見えた。
どこかで道を間違えた。カーナビのせいで、すっかり地図が読めなくなった。ツーリングをするたびに実感していたけれど、今回の件は、いつも以上に残念だった。盛り上がるはずが、へこんでしまった。こんな気分で、海を見るはずじゃなかった。
きっと、必死さが、足らないんだな。出発前に、ツーリングマップルで一通りのルートを確認するけれど、伸縮自在のカーナビの地図に慣れてしまうと、ツーリングマップルの地図は、道が細くて小さくて、こんなに雑な地図じゃ、見ても意味がない、と覚えるつもりにならない。でも、二十年前は、この地図を必死で覚えて、わりとまともに走っていた。雑になったのは、地図ではなくて、こっちの地図読解能力だ。どういう能力にしろ、昔できていたことができなくなるのは、さびしい。
よみがえれ、俺の地図読解能力。まずは、途中でめんどくさくならずに、落ち着いて、最後までツーリングマップルを見るところから、リハビリスタートだ。

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