北海道の動物たち
襟裳岬は、風が強かった。駐車場にバイクを止めたときも、サイドスタンドだと風にあおられて倒れるんじゃないか、と思うくらいに風が強かった。襟裳岬の先端に向かう遊歩道に出ると、さらに風が強くなった。風にあおられて、まっすぐ歩くのが難しかった。
そんなふうに、観光に支障が出るくらいに風が強い襟裳岬の遊歩道の入口に、襟裳岬は日本でも有数のゼニガタアザラシの生息地です、と書いてある看板があった。
北海道では、いろんな野生動物を見た。野付半島では、道路を横切る鹿の群れを見た。能取岬に向かう途中の道では、道路の真ん中に横たわるキタキツネを見て、思わず顔を背けたら、むくりと起き上がって走っていったので、びっくりした。カムイワッカでは、熊が出て大騒ぎだった。霧多布岬では、ラッコを見た。サルボ展望台では、エゾリスも見た。あと、これは、野生ではないけれど、エサヌカ線の近くの牧場では、楽しそうに走り回る牛を見た。駆け足の牛を見たのは、初めてだった。
これだけたくさんの動物を見られたのだから、ゼニガタアザラシも、きっと、見られるに違いない。強風の中、帽子を手で押さえて、風にあおられてヨタヨタしながら、襟裳岬の先端を目指した。
岬の向こうの岩場に、目を凝らした。いない。いやいや、ゼニガタアザラシの色は、岩の色とよく似ているから、注意してみないといけない。いない。いやいや、今日は、風が強いから、岬の先端ではなくて、岬の西側の入り江にいるのだろう。いない。いやいや、入り江の中は、岩がたくさんあるから、しっかり見ないと。あの岩には、いない。あの岩には、いない。あの岩にも、いない。いやいや、そんなはずはない。絶対に、どこかにいるはずだ。だって、今回のツーリングでは、あんなにたくさんの野生動物を見られたのだから。いやいや、いやいや、いやいやいや。
岬の先端に、視線を戻した。今日は、襟裳岬には、ゼニガタアザラシは、いません。
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