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普通のサーターアンダギー

座喜味城と、今帰仁城を見て、沖縄の城跡は、普段見る城と全然違う、とわかった。
まず、石垣の石が、小さかった。そして、形もバラバラだった。こんなに大きさと形が不規則な石を積み上げているのに、こんなにきれいに石垣の形に収まるのが不思議だった。石の大きさは、今帰仁城の方が、座喜味城よりも小さい気がした。でも、座喜味城の方が、石が丸かった。平らな面にびっしりと埋まった丸みのある石は、集合体恐怖症の人は、たぶんダメだと思うくらい、つぶつぶな感じが強かった。
もう一つ、いつもの城と違うのは、立派な石垣があるのに、その中に、城がないところだった。今帰仁城の中にあった説明を見ると、どうやら、中には、小さい建物がいくつもあったらしい。でも、天守閣のあるような城は、なかった。城といえば、天守閣なので、城跡に観光に来て、石垣の中が芝生の広場になっていると、少し変な感じがした。背の高い建物は、台風で飛ばされてしまうのだろうか。
今帰仁城の中で、いろんな形の石垣と、いくつかの芝生の広場を見学して、駐車場に戻ってきた。出発する前に、トイレに行った。その途中に、小さいお土産屋が、いくつかあった。腹も減ってきたので、何か食べるものはないか、とお土産屋をのぞいてみた。サーターアンダギーを売っている店があった。サーターアンダギーの横のポップには、おばあ手作り、と書いてあった。一袋5個入り。サーターアンダギーは、何も印刷されていない透明な袋に入っていた。袋の口は、ビニールタイで括られていた。
駐車場に戻って、サーターアンダギーの袋を開けた。袋には、何も印刷されていないだけじゃなくて、消費期限も、原材料も、書いてなかった。一つ、取り出した。思ったよりも、重かった。かぶりついた。カリッと揚がった外側から、油がじゅわー、と出てきた。内側は、しっとりとしていて、口の中がパサパサになることもなかった。甘さは控えめで、素朴な味だった。うまかった。
手を油でベトベトにしながら、一つ平らげた。こんなに油が染みこんでいて、こんなにうまいんだから、これは、2個食べたら、何かが胸にこみ上げてくるぞ、と思いつつも、手が止まらなかった。つい、3個も食べてしまった。
いつもだったら、こんなに油じゅわじゅわなお菓子を食べたら、胸やけと後悔がこみ上げてきて、胸がいっぱいになってしまう。でも、どういう仕組みか知らないけれど、この時、こみ上げてきたのは、おいしいものを食べた満足感だけだった。こういうお菓子を食べたときにありがちな、口の中が酸っぱくなるようなこともなかった。原材料名も書いていないような、おばあの手作りだから、余計なものが入っていない、という理屈はわかる。じゃあ、普段食べているものには、何が入っているんでしょう。

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