見出し画像

ツーリングと登山の共通点

妙義山は、今回が2回目だった。
初めて来たときは、ファンタジーRPGに出てきそうな幻想的な形の岩山が、急に目の前に現れて、完全に圧倒された。前回のツーリングでは、本当は、中之嶽神社の奥にある見晴台まで行く予定だった。でも、残念ながら、バイクのトラブルで時間がなくなってしまって、中之嶽神社の駐車場から岩山を見上げるだけで終わってしまった。
通りがかりに見るだけであんなにすごいなら、景色を見るための見晴台から見る景色はもっとすごいだろう、という期待は、ツーリングから帰ってきても、膨らむ一方だった。今回のツーリングの計画を立てるときも、妙義山は外せなかった。これから始まる1週間のツーリングの、最初の目的地に妙義山を設定してあることからも、その意気込みは伝わるかと思う。無事、見晴台からの景色を見ることができたら、今回のツーリングは、ほとんど成功だ。だったら、景色が見られなかったら、ツーリングはほとんど失敗で、残りの1週間はどうするんだ、という指摘もあるかもしれないが、そういうのは聞かない。なにしろ、今、私は、中之嶽神社の駐車場で、妙義山を目の前にしていて、晴天ではないけれど、雨は降っていなかった。ありがとうございます。今回のツーリングは、ほぼ成功でございます。
事前に調べたところによると、神社から見晴台までは400m。距離は大したことないけれど、端から端まで、ほぼ登山、と言えるくらいの上り坂で、所要時間は40~50分、となっていた。
中之嶽神社に入ってすぐのところに、金色の巨大な大黒様がいた。その奥に、拝殿があった。拝殿の横には、急な角度の階段があって、その上に、ご神体の岩があった。お参りをしてから、階段をゆっくりと上った。まだまだ先は長い。というか、まだ始まっていない。
階段を上って、ご神体の右側の道を進んでいくと、「見晴台400m→」という看板があった。矢印の方向を見た。そこには、水の流れる沢があって、道はなかった。沢の上の方を見ても、道のようなものは見つからなかった。沢は、そんなに険しくなくて、普通に登れそうだった。とりあえず、矢印の通りに、沢を登ることにした。もし、これが道じゃなかったら、そのうち行き止まりになるだろうし、そうなったら戻ればいい。先に進むと、道があった。そこには、情報通りの、厳しい坂道があった。
この世界には、良い景色を見るためには上らないといけない、という決まりがある。下ることもあるけれど、その場合、帰りは上りになるので、つまり、良い景色を見るためには、必ず上る。ツーリング中に、景色の良いところをたくさん訪れて、坂をたくさん上ったおかげで、最近、坂道を上るコツのようなものがわかってきた。歩くペースは普段と同じで、歩幅を小さくするのがポイントだ。坂道は疲れるから、ゆっくり進めばいい。でも、この先に良い景色がある、と思うと、ゆっくり歩こうと思っても、ついついペースが上がってしまう。だから、ペースは普段のままで、歩幅を小さくする。歩幅が大きくなると、一歩進むのに使う力が、明らかに普段より大きくなる。小さい歩幅で一歩ずつ進んで、太ももに力が入りすぎてたら、歩幅が大きくなって、歩き方が間違っているということなので、修正する。この方法だと、歩き方が間違っているのを知る機会が一歩ごとにあるので、疲れる前にカバーできる。他の人はどうか知らないけれど、自分の場合は、この方法で、それなりにうまく行っている。
ただ、この方法には、問題が一つある。この歩き方だと、足がセコセコ動くわりに、全然進まない。体力がなくて足が上がらない人のような歩き方になってしまう。妙義山の厳しい坂道を上りながら、自分に問うた。
俺、ヨボヨボじゃない?大丈夫?
いや、これでいいのだ。バイクだって、坂道を登るときにギヤを落とすと、回転数が上がるのに、スピードは落ちるじゃないか。同じだ。だから、私は間違っていない。ヨボヨボと歩いているみたいに見えるけれど、間違っていない。さっきから、大声でギャーギャーと騒ぎながら登ってくる若者の集団が、だんだん近づいてきているのが聞こえていた。そのうち抜かれてしまうかもしれないけれど、あいつらはわかっていない。最後に笑うのは私だ。そう自分に言い聞かせて、トボトボ歩いた。いや、間違えた。確実に歩を進めた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?