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灯台に上る

今回のツーリングでは、犬吠埼灯台、野島崎灯台、洲崎灯台、観音崎灯台、安房崎灯台、の5つの灯台に行く計画を立てた。そのうち、犬吠埼灯台と、野島崎灯台と、観音崎灯台は、上がることができる灯台だった。犬吠埼灯台は、行くのは早すぎて、上がれなかった。
野島崎灯台には上がれた。上まで上がって、灯台の塔の周りを取り囲むようについている、外の廊下を歩いた。風が強かった。海と陸がつながった360度のパノラマが見えた。写真を撮ろうとしたものの、景色が広すぎて、うまく写真が撮れなかった。風が吹く中、片手で帽子を押さえて、片手でスマホを持ってもたもたしていたら、突風が吹いて、スマホが飛ばされそうになった。平たくて薄いスマホは風に飛ばされやすい形をしている、という当たり前のことに、いまさら気が付いた。
 
ツーリングから帰ってきたあとで、気になったので調べてみたら、日本には、上がれる灯台が16基あるそうです (https://www.tokokai.org/tourlight/)。16、という数字は、手が届きそうな数字なので、コンプリートしてみたくなった。そう思って、リストに載っている他の灯台を見た。今回の3基を入れたら、10基に行っていた。16のうち、10というと、それなりの数だ。最初からコンプリート狙っていたら、そろそろゴールが視野に入るくらいの数字だ。それなのに、上がったのは、野島崎灯台1基だけだった。なんで、どこも上ってないのか。
これには、ちょっとしたわけがある。
実は、今までのツーリングで、灯台に上ったことが1回もないわけではなかった。経ヶ岬灯台には上った。でも、この灯台は、上がれる灯台のリストに入っていない。経ヶ岬灯台は、年に一度だけ、特別に灯台の中を見学できる日があって、ツーリングで立ち寄ったのが、たまたまその日だった。
その日は、年に一度の特別な日、ということで、地元の人がたくさん見学に来ていて、灯台の見学は行列ができるほどの賑わいだった。海上保安庁の人たちも、グッズを売ったり、制服を着て記念写真が撮れる、という催し物をやっていたりした。地元のテレビ局も取材に来た。
それはそれは、お祭りのような騒ぎだったのです。なにせ、駐車場についてヘルメットを脱いだら、いきなり地元のおばさんに、
「あなたも灯台見に来たの?」
と話しかけられたくらいですから。こんな日に、たまたまツーリングで経ヶ岬灯台に立ち寄るなんて、私は、なんて運が良いのでしょう。
そういうわけで、灯台の中に入る、というのは、地元の人が大騒ぎするくらい特別なことで、めったなことでは入れない、と刷り込まれてしまった。それ以降、灯台に入る、という思考回路が閉じてしまって、ツーリングの計画を立てるときに、灯台に上がれるかどうかを気にしなくなった、というわけです。
めったに入れない経ヶ岬灯台に入れる、という幸運に恵まれてしまったがために、他の灯台に入る機会を逃し続けた、というのは、何か人生訓になりそうな残念パターンなので、灯台下暗し、をもじって、気の利いたことの一つも言いたいところだけど、いいのが思いつかない。
 

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