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階段アレルギー

朝から、しっかりと雨が降っていた。
さざ波館の部屋の窓からは、天気が良いと富士山が見える、と聞いていた。今は、すぐそこの海も見えにくかった。
宿から富津岬までは、30分もかからなかった。岬の手前の林の中を通って、岬に出ると、明治百年記念展望台が、どーんと立っていた。ピラミッドのような大きな四角錐の展望台は、全体が階段と踊り場で構成されていた。複雑にも見えるし、子供がレゴで雑に作ったようにも見えた。
展望台は、海辺に立っているせいで、あちこちにサビが浮いていた。そのせいか、朝6時の薄暗い雨の中で見ると、数年前に営業が終わった遊園地で放置されているアトラクションの機械のようにも見えた。
雨は、かなり強く降っていた。駐車場で、その大きな展望台を見上げて、ため息をついた。
階段が、たくさんある。
昨日、鋸山で5年分くらいの階段を上ったので、階段の過剰摂取によるアレルギー反応が出ていた。階段を見るだけで、体がだるかった。せっかく平らな場所なのに、わざわざ階段を積み重ねなくてもいいじゃないか。しかも、こんなにたくさん。
雨が降っているので、レインウェアを着て、ヘルメットをかぶったまま、とぼとぼと階段を上がった。展望台の一番上にたどり着いた。こんな天気なので、景色は期待していなかった。展望台からは、暗い色の海と、工場の煙突が何本か見えた。その景色を見て、富津岬をインターネットで調べたとき、必ずこの大きな展望台の写真が出てきて、展望台からの景色の写真は出てこなかったのを思い出した。
景色を見るための展望台が、景色より目立っていていいのか。階段アレルギーによる、八つ当たり、という症状が発症していた。

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