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【散文|詩】未完のラブレター

 
 彼(あ)の場所に焦がれた時間だった。
 
 夕陽色した声で朗らかに笑う、おしゃべりが好きな君。
 それなのにこころを言葉で語らず、行動で魅せるあなた。
 クールな印象とは裏腹に、いつも心に「少年」を飼っているキミ。
 凛とした横顔と慈愛に満ちた瞳で、誰かを見つめる貴方。

 すべては切り取られたツクリモノ。
 たくさんある君の人生のワンシーンでしかない。

 それでも私は、キミに五感を攫われた。
 息吐く間もない一瞬の出来事。


 今日まで楽しいばかりではなかった思い出を、
 けっして美しくない過去たちを撫でながら、
 ようやく私は違う道を選ぶことができるの。

 はじまりがなければ、おわることもない、
 恋とも呼べない世界の理から外れた物語。

 君は気づいていないでしょう。
 この数年、私が紡いだ言葉はほとんど君に向けられていたと。

 あなたは気づかないでしょう。
 言葉にしなくとも私の気持ちが全て眼差しに溢れていたことを。

 キミは識っていたでしょう。
 自分がいつだって誰かのトクベツであることを。

 貴方は報ることがないでしょう。
 浮かばれず死にゆく気持ちがあることを。 

 それでいい。それが正しい。


 
 この先、彼方へ走っていく道が
 いつも明るいところへ続いていますように。

 それだけをずっと、どこかで、祈っている。
 

 

 


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