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【詩】うたかたと相成りまして

鈴の音が転がっては波間に消えて
傷ひとつない白い脚が 流れに逆らいながら進んでいく
機嫌よく海と踊る彼女の横顔は
まるで絵画のように うつくしい

薄紅に染まる空を潜り抜けて
やさしく絡んだ人差し指の爪をなぞる
あなたの整えられた人生のようだね
滑らかで 艶やかで どこに触れても安全で
ただ少し、舐めると刺激が強いだけ

お互いの手のひらに 片道切符が1枚ずつ
日没でふたりで亡いたあと
ひとりであたらしく生まれる 予定通りに

短編小説にでもなる量の言葉
瓶に向かって叫んで いくつも投げて 
これからも子どもの僕らは 大人のフリして
よそ行きの服を纏い 知らない人になる

この手で攫えなかったあなたを せめて
神様が見初めて隠してくれたなら なんて
どこまでも他人任せ 罪となる無邪気さ

かたちを残さず消えてしまえたら
どれだけしあわせだっただろう

とるに足りない一人 唯一無二のひとり
この海の泡にも 綺麗な歌にもなれないけれど

かけ合わさって 溶け合ってしまえば きっと、

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