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【散文】止まり木で待ち合わせ


 定期的に集まるわけではない。そもそも、いつも行動を共にしていたわけでもない。

 グループラインの通知が鳴るのは半年に一度で、常々近況報告をする間柄でもない。ただ、誰かが思い出したように号令をかけて、予定をすり合わせて会う日が決まる。当日顔を合わせるとそれまで仕事やプライベートですら力みすぎていた怒肩がスッと下がる。いつもより深く呼吸ができるようになる。呼び名が聞こえて改札の向こう手を振る面々を見た途端、自然と笑顔になると同時に少し泣きたくなった。

 学生時代のトモダチとは不思議なもので、昨日イヤンパスのカフェで上がったしょうもない話題の延長線のように、四方からテンポよく言葉が飛び交う。もちろん、それぞれを取り巻く環境も立場も好きなものも大切にしているものも変わってしまっているが、すべてを受容れる体制が整っている、不思議な空間。気を遣ったりしても、嘘はない。

 違う目線と違う価値観が交わりながら、平行線上に走っていく。
 違う個体が同じ空間で共存して、時間の流れに身を任せる。

 とてつもなく「尊い」当たり前にこっそり感謝して、大好きなカプチーノに口をつける。ほどよい甘さとミルクが口いっぱいに広がって、愉悦と至福でいつもより多めに笑ってしまうよ、今日も。 





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