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【中国オンライン診療の20年間(1)】序開:オンライン診療の主役達の入場

登場人物紹介:

李天天:丁香園 創業者
王航:YahooChina VP、好大夫在線 創業者
周鴻禕:YahooChina CEO、奇虎360 創業者
雷軍:KingSoft CEO、XiaoMi創業者、エンジェル投資家
廖杰遠:科大訊飛(アイフライテック)共同創業者、微医 創業者
張鋭:網易新聞副編集長、網易新聞モバイルアプリリーダー、春雨医生 創業者

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2000年、ハルビン医科大学で腫瘍免疫修士課程を専攻している李天天はDreamwaverで個人HPを立ち上げた。この医学文献の検索サイトはその後BBS(電子掲示板)になり、数多くの医学生がこの丁香園(DXY.cn)」に集まるようになった。

李さんの想像以上に人気になったこのサイトはわずか数年で10万ユーザーを越えた。非営利ウェブサイトから脱却することを考え始めた李さんは医療サイトとしてICPサイト登録(注:中国行政手続きの1つ)の申請を行った。
「あなたの考えていることはとても斬新で、面白いです。だがしかし、知識のある人はWebを使わないんだよね」と、当時主管部署であるハルビン医薬品管理課の責任者に言われ、直ちに受理されず、結局ICP登録だけで1年もかかった。

2005年、友人から「杭州はとてもビジネスしやすいところだよ」と聞き、地元から2700キロも離れた杭州に来て、当時ネットで知り合った友人2人と一緒に会社を作った。

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一方、中学校の同級生である王航周鴻禕はすでに最初の勝利を納めようとしたところーー彼らが興味半分で作った3721という当時中国最大の検索サイトを2.1億ドルの価格でYahooを売り、それぞれYahooChinaのVPとCEOになったあと、一緒にセキュリティ会社の奇虎360を作った。

2006年、共同創業者兼副社長である王航が奇虎の株を売り(注:エクイティキャッシュアウト)、好大夫在線を作った時、当時すでに数件の成功を収まった雷軍が「体力の準備はできたか」と彼に聞いた。

そう、彼のやろうとするのはかなり体力のかかるビジネスだった。

2006年から2008年の間、人力で病院や医者情報の通信簿を作るために、王航はメンバーと同じように、自転車で各病院に行き、1階ロビーの掲示板情報を仰ぎながら、医師の診療スケジュールや履歴をメモって、オフィスに戻ってPCに入力し、ウェブ上に公開する作業を繰り返した。

創業当初、熟知していた検索技術を使ってスクレイピングの方法で各病院のHPから情報を取る方法をイメージしていたが、そもそもHPも作っていない病院が大量に存在している中、HPがある病院情報もほぼ使い物にならないほど更新されなかった現実に知らせられた。

彼らはゼロから北京、上海、成都、武漢・・・各主要都市をめぐって、コツコツと20万名ほどの医師情報とタイムリーの診察情報を集めてきた頃、サイトの訪問量が目に見える程度で増え始めた。

2008年、「好大夫」は中国最初で最大の医者・病院・診察情報提供サイトとなった。ただし、彼らはビジネスモデルに関する模索はまだまだこれからだ。幸いなことに、雷軍と共同開発資本の45万ドルのエンゼル投資がこの20人チームを支えてきて、2008年、金融危機が勃発した前の週に、DCMの300万ドルAラウンドの投資が着金されました。最初の五年間に、王航は特にお金稼ぎで急がなかった。

その一方、2008年は丁香園と李さんにとっては難しい年だった。
3年前、李さんは中国トップクラスの医学学位である北京協和医科大学の博士号を放棄し、丁香園にフルコミットした。当時丁香園が稼いだお金は全部新しい業務を開拓するために使われてしまった危機から脱却するために、共同創業者同士で各自の家を担保に入れ、なんとか14万ドルの運転資金を入手し、ギリギリ乗り越えた。

金を稼ぐんだ。お金のプレッシャーに追われた李さんは毎日フォーラムのデータをマインドして、やっとお金になる木を見つけた。この医者のコミュニティでの一番の需要は「人材」のようだ。チームは連日徹夜して素早く「丁香人材」β版を作った。バグがとても多いバージョンではあるが、リリース初日から、履歴書を提出するユーザーもいれば、サービス申込の病院もいた。

会社化してから初めて融資を受けるまで、丁香園は4年間自力で頑張った。お金がない中、市場の支払意欲や真の需要を掴んだからこそ、彼らの未来が拓かれた。2010年2月、李さんも最初の200万ドルの出資を受けた。出資先もDCMだった。

丁香園が選んだのは医者コミュニティを深掘りする道だ。医療人材、医療用消耗品の注文、または製薬企業の学術普及など、日本のエムスリーさんと類似するToBビジネスをめぐって作られた当時のエコシステムの中、まだまだ患者の関与はなかった。

ところで、患者さんのニーズに着目する人もいた。

日本や欧米と違い、中国では総合病院・大学病院(以下総合病院)を選ぶ条件が設けられてなく、初診から総合病院で見てもらうことが可能となる。同時に、医療リソースの分布が非常に偏っていて、医療圏毎の格差、都市と地方の格差、総合病院とクリニックの格差など、それぞれが目立っている。加えて、各病院の中、医師のランクにより「専門家」と「一般」という2種類の枠が存在するため、難病重病の患者達が大都市の一番いい病院に集まれ、「専門家」に見てもらうニーズに駆使され、トップクラスの総合病院の入り口に並ぶ行列が夜明けから作られるだけでなく、診察開始後のロビーには常に旧正月の交通機関のように混雑で、実際の診察時間も極めて限られる現実だった。

当時、病気の甥を連れて各総合病院のロビーでこの光景を経験した男がいた。人工知能(AI)を活用した音声認証大手である中国の科大訊飛(iFLYTEK アイフライテック)の共同創業者である廖杰遠は誤診断のせいで、本来必要のない手術2回も受けさせられた2歳の甥を見て決意した。
2010年、彼は独立を選び、中国初の病院オンライン予約サイト「微医」サービスを作った。

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廖さんは着手した最初の業務は病院の予約窓口前の行列をなくすことだった。
当初彼は構築しようとした商流は、患者がオンラインで医者の診療情報を確認し、診察予約を行ったら、瞬時に病院システムへ同期させるイメージで、危うく王航の好大夫在線サービスと同じ土台で戦うところだった。
幸いなことに、規制緩和のニュースがタイミングよく知らされた。

2009年、元国家衛生部は「公立病院で診療サービスの予約の実施についての意見」を発表し、2011年には「診療サービスの予約をさらに進めることについての通知」を発表した。これによると、今まで整理券の発行もなく並ぶことしか入手できない枠は、2011年12月から三級病院(注:中国病院ランクの上位概念≒総合病院・大学病院、かつ当時公立病院しか三級病院の審査資格がなかった)のすべての普通枠の予約、85%の専門家枠の予約が開放されるようになった。

IT構築が追いついていない病院にとって、安定性の高いシステムをいかに素早く構築し、運用に落とし込むのは課題だった。

廖傑遠は総合病院とビジネスしたかった。
公立病院の院内ITシステムをベースに予約サービスを追加する改造と引き換えに、廖さんは病院の一部の番号のリソースを手に入れることを考えた。さらに、彼が当初構想したような病院の内部ネットワークに予約情報を同期させることも実現できるかもしれないので、彼は病院システム屋になった。
華やかなITバックグランドを持っている彼らは華東地区(注:中国エリア区分の1つ、主要都市は上海・杭州・南京・蘇州・寧波など)の最大の公立病院を着目し、一点突破した。
6ヶ月後、復旦大学付属華山病院で彼らのシステムが無事リリースされた。
余談ですが、今年中国で新型コロナウイルスによる肺炎が感染拡大する中、「耳が痛い正論ばかり言い、ためになることしか言わない」キャラでネットで話題になった張文宏教授は華山病院の感染科主任を引き継いのもこの年だ。

2010年までに、中国のモバイルインターネットユーザーは3億を超え、固定インターネットユーザーとの重ねは60%を超え、2011年に70%を超える見込みだった。当時の予想によると、2012年にはインターネットユーザーのモバイルインターネットへの移行が完了し、インターネットユーザーの移動に力が尽きます。

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その流れを狙ったのはメディア出身の張鋭だ。一流大学である中国人民大学ジャーナリズム専攻の修士課程を修了し、今まで網易新聞副編集長、網易新聞モバイルアプリリーダー、網易オンライン教育プロジェクトリーダーなど成果を上げたが、非常に感度の良いビジネスセンスを頼りに、2011年11月中国国内初のモバイル端末による問診アプリ「掌上春雨」(現「春雨医生」)をリリースし、ヘルスケア業界に進出してきた。
彼は創業直後のインタビューで「移動医療、M-Health」などの全く新しいキーワードやコンセプトを頻発したことで、短時間に注目を集められた。

これまで、オンライン診療までの主要通過点である①医療情報の統合、②院内システムと院外との連携、③医療情報のモバイル化が全て解除された。

少しずつ盛り上がってきたマーケットのため、いよいよ巨人が入場し、さらに俊敏な創業者も動き始めます。

中国の「BAT」と呼ばれるBaiduアリババテンセントが夢にも見なかったのは、平安保険グループにオンライン診療のトップバッターに取られてしまったこと。
あの「天才」と呼ばれてきた男がどうやって今までのプレーヤーを追い越し、0から中国最大級オンライン診療サービスを作り上げたか。

次回、オンライン診療のβ版が見える時代に行きましょう。

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