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風を待つ

2021年は、新しい歌と共にやってきた。

聴くまで、本当は少し怖かった。
あのCMで切り取られた部分の歌詞しか知らなかったから、その前後にどんな歌詞が置かれているのだろうかと。

年末にかけて「明日」という曲を繰り返し聴いていた。
かつて“ワールド ビジネス サテライトのテーマソングとして書かれた曲。
初めてOnAirされた時、バックで流れていたのは世界のNews映像で、曲が終わっても2,3秒スタジオが静まり返って誰も言葉が出なかった(アンカーの小谷さんさえも)のを鮮明に覚えている。

5月末に、“Sing for One“というライブ映像の配信があって、そこでアーティスト本人が選んだ曲のひとつがこの「明日」だった。
歌詞はそのまま、この世界情勢の中で闘う人たちの映像へ重なるようだった。

この場所からいつか、抜け出せるのだろうか?
変わってしまった世界で生きて行く覚悟を決められなくて、逃げているのではないか。
闘うのに疲れて、諦観の域に入ってしまったのだろうか(日本の場合、そもそも真剣に闘っていたかも疑問だけれど)。

そう思っていた、昨日まで。

英語の歌詞はあまり多用しない人だった。
歌詞の通り、いつもより少し柔らかく、語りかけるような歌い方。
風を捉えて翔び立つ鳥のように、力強いロックへ。
今までと違う曲の形、73歳はこんな中でも進化していた。

「明日」では“ありふれた明日のために、大切な人のために、闘え“と歌っていた。
「風を待って」では、“その明日は、今を重ねた先にある“と。
繋がっていないようだけれど、きちんと繋がっている。
毎日を大切に生きることは、明日に繋がる静かな闘いなのだと思った。
次に吹く風を逃さずに捉えれば、道は拓ける。

見上げれば、今日も綺麗な青空。
きっと、大丈夫。
ゆっくり風を待とう、いつか風が吹くまで。

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