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朱鳥 蒼樹 掌編選

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掌編小説を集めました
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#小説

闇医者【創作掌編】

 僕がそのお医者様と初めて出会ったのはマシェという山奥の自治区だった。

 その日、山菜採りに山に入っていた僕は木に絡みついていたイバラで足首を深く切ってしまった。その場では何ともなかったが、家に帰って見てみると傷口は化膿して何倍も膨れ上がり、その痛みで一歩も歩けなくなってしまったのだ。
 僕はエルフと呼ばれる種族で、レナウン皇国では人間以下の扱いを受けている。幸いここマシェは多種族の暮らす自治区

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こころうり(創作掌編)

こころうり(創作掌編)

 『当店で販売致しております《こころ》は非常に繊細でございます。ご購入をお考えの方は以下の点にご注意ください。

  1、割れ物注意、天地無用
    お持ち帰りの際は十分お気をつけください。

  2、手作り品のため所々に綻びがございます。
    あらかじめご了承ください。

  3、初期不良以外での返品・交換はできません。

  4、オーダー品のお届けには
    お時間をいただいております

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思い出の砂時計(創作掌編小説)

 人間は薄情だ。

 肉の器が死を迎え、無事に往生できるようにと儀式を行うまでは飽くまで泣き続ける。ところが焼いて骨になった瞬間に、彼らはまるで泣き尽くしたとでも言うかのように涙の一滴すら流さなくなるのだ。骨は無機物でそこに感情など宿ろうはずもない、という無意識の現れなのだろうか。

 否、忘れたくない、そう思っていても記憶は薄らいでいく。無常が彼らの視界を塗り替えて日常的風景を上書きしていく。そ

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DeathMask(創作掌編小説)

DeathMask(創作掌編小説)

 幼い頃、貴方はこんなことを言われたことはあるだろうか。

 「自分がやられて嫌なことを他人にしてはならない」

 こんな言葉、詭弁だ。例え自分がこの言葉を守って正直に生きていたとしても、他者が自分と同じように守ってくれるとは限らない。よりよく生きるために己に課したルールがある日突然僕を裏切ることだって考えられよう。僕の首をキリキリと絞め上げて、どうだ痛いか、苦しいか、と嘲笑する。その表情を想像し

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空の箱(創作掌編小説)

 ――内緒だよ。

 彼はそう言って、私をある場所に誘った。
 骨董趣味が昂じ、古美術商達の間でも噂の稀少種蒐集家。それが彼だ。
 まだ年端もいかぬ風体の彼がたった一人で住まっている屋敷はそれ自体が第一級の骨董品とも言えるほど。内部は己が百年の時空を越えてしまったかと錯覚するぐらい、生き生きとした骨董たちが所狭しと並んでいる。
 骨董にさして詳しくない私でもわかる。これは一級品だ、とんでもなく状態

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雪風よ…(創作掌編小説)

 
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 雪の様な白磁の肌、絹糸の如き艶やかな髪、三日月を形どる唇、雫煌めく垂れた睫毛…。其の奇跡の美しさに僕は思わず息を飲んだ。言葉等出てきはしまい、否万が一出てきたとしても俗世に残る言霊で此の美しさを説明できる筈がない。其れ程にも端正で儚くも麗しく…。
 …例え透き通った着物の奥にたった一筋走る歪な紋が在ろうと、彼の魅力は変わり

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