【シード調達のリアル #3】私たちが伴走したい起業家像とチャレンジしたい事業領域 - Finance by Genesia -
1.Finance by Genesiaを始めた背景
昨今、数多くのVCファンドが組成され、数百億円規模の大型ファンドも珍しくなくなってきました。ベンチャーキャピタルの数が増えることはスタートアップエコシステムにとってポジティブな一方で、起業家から見ると、自社の事業ステージや事業領域にどのVCがフィットするかや、実際の資金調達に至るまでのプロセスが見えづらいのが現状だと思います。
その結果、起業家が投資を受けられる可能性の低いVCにアプローチしてしまったり、資金調達に繋がらないコミュニケーションに時間をかけてしまうなど、起業家の貴重な時間を最大限有効活用できていないケースも生じてしまっているように感じています。
そのような想いから、「起業家との出会い」「投資対象や投資基準」「デューデリジェンス」「意思決定」「資金調達後のコミュニケーション」「追加投資」といった私たちの投資活動全般についてのリアルを出来る限り可視化する "Finance by Genesia" というシリーズを始めました(これまでのエントリーは↓)。
私たちは、事業のゼロからイチを生み出すタイミング、いわゆるシードステージで投資をするベンチャーキャピタルです。なので、起業家とはじめてお会いする時点では、チャレンジする事業領域は決まっていても、プロダクトもなければ、具体的な戦略もまだ描けていないことが殆どですし、実際の投資判断についても、誰がやるのか?(起業家)と何にチャレンジするのか?(事業領域)の2つだけで投資を決めることが多いのが私たちの投資判断のリアルです。
そのあたりも踏まえて、第3編となる本稿では、私たちが伴走したい起業家像とチャレンジしたい事業領域について書きたいと思います。
2.私たちが伴走したい起業家像
私たちが伴走したい起業家のイメージを一言で表現するならば、「澄んだ水で満たされている、大きな欲求のタンクを持った起業家」です。
事業を成功に導く上で、数々のHard Thingsに直面しても折れない粘り強さや、高いスキルや能力を持っていることは事業を成功に導く上で欠かせない要素ですが、これらの源泉となる情熱や努力を持続的に生み出すのは "起業家の持つ欲求" だと考えています。だからこそ、その事業にチャレンジしたいと考えている理由や背景を、欲求レベルで深く理解することを大切にしています。
次に、成し遂げたいビジョンが大きいほど、想いをともにするたくさんの優秀な仲間を集め、持てる力を掛け合わせなければその実現が不可能なのは間違いありません。だからこそ、起業家の優秀な仲間を集める力(巻き込み力)がとても大切だと考えています。山頂を目指す山を定め、その想いや意義を社会に広く伝えていくことを通じて、ともに登頂にチャレンジする優秀な仲間をいかに集めることができるか。資金調達も、いうなれば想いをともにする投資家という仲間を集めることに他なりません。
最後に、自分に光を当てる起業家ではなく、仲間に光を当てられる起業家であり、自分を主語にするのではなく、常にチームを主語に考え、行動できる起業家に伴走したいと考えています。その方が、仲間の強みや能力が引き出されるだけではなく、一人一人が持つ力が掛け算となり、チームとしての成果が最大化すると考えていること、そして何よりそういったチームの方が、一人一人が自分らしく活き活きと働くことが出来ると考えているからです。このあたりの私たちの考え方については、こちらの記事も参考になると思います。
3.私たちがチャレンジしたい事業領域
①大きな時代の方向性に沿った事業かどうか
その事業にチャレンジする(投資する)かどうかを見極める上で、私たちが最も重視しているのは、「大きな時代の方向性に沿った事業かどうか」 という視点です。世の中で起こっている変化を俯瞰して見てみると、その変化には普遍的、且つ不可逆な方向性が存在しています。
上記のような社会的・環境的な変化もあれば、以下のようなビジネスモデルの変化も存在しています。
e.g.)ビジネスモデルの変化③:多重取引構造の解消
それ以外のビジネスモデルの変化についてはこちら(↓)
このようなビジネスモデルの変化は、トランスフォームを生み出す何らかの因子が存在することによって起こる趨勢であり、その変化を生み出す因子と向かう方向性を本質的に理解しておくことは、事業機会の発見や支援先の戦略を磨き込む上で役に立つだけではなく、事業の成功の再現性を高める意味でもとても役に立つと考えています。私たちは、このようなビジネスモデルの変化の方向性を「DXの型」と名付けてフォーマット化し、ビジネスの現場で得られるナレッジやノウハウを各フォーマット毎に蓄積し、アップデートし続けています。
私たちが「大きな時代の方向性に沿っていること」が最も重要だと考えている理由ですが、事業の立ち上げにおいて、事業の入り口でゴールまでの正しい道筋を見通すのは不可能であり、ほぼ全ての事業は、事業を前に進める中で徐々に見えてくる新たな景色を取り込みながら、適切なTRY&ERRORを繰り返す中で、大きな時代の方向性に沿いながら事業の成功に近づいていくというこれまでの経験則があるからです。だからこそ、事業立ち上げ期においては、短期的な戦略・戦術の確からしさよりも、その事業が大きな時代の方向性に沿っているかを見極めることの方がはるかに重要な意味を持つと考えています。具体的な戦略が描けていなくても、起業家と事業領域だけで投資を決めることが多いのはそのためです。
②その事業が持つマーケットポテンシャルの見極め
一つ目のポイント(大きな時代の方向性に沿った事業かどうか)に加えて、私たちが重視している二つ目のポイントは、大きな時代の方向性に向かう流れの強さ(変化を引き起こす因子の強さ)と、そこに生まれるマーケットサイズの見極めです。
その上で、代替えサービスや競合プレイヤーが提供している価値の本質を把握することを通じて、最も水の勢いがあり、多くの水量を流し込める課題解決のアプローチを見極めるようにしています。事業によっては、代替えサービスや競合プレイヤーがほぼ存在しないケースもまれにありますが、その場合は、誰よりも早く、水の勢いがあり、多くの水量を流し込めるアプローチを発見することがKSF(重要成功要因)になるので、Founders Market Fit(起業家とチャレンジする事業領域のフィット度合い)に大きくウエイトをおいて投資判断するようにしています。
③社会的意義やソーシャルインパクトの大きさ
私たちが重視している3つ目のポイントは、社会的意義やソーシャルインパクトの大きさです。私たちは、「すべての人に豊かさと機会をもたらす社会を実現する」というビジョンを掲げています。そして、そのビジョンに向かうための私たちのチャレンジとして、「豊かな生き方」「循環型経済」「叡智の発揮」「健やかな社会」「共存・共栄」「情報・機会の均等」の6つを掲げており、これらの実現に向けて、ともにチャレンジできる起業家に伴走したいと考えています。
今世界は、色々な意味で分断されていると思います。そして、その分断は、知り、学ぶ機会の不足から生まれている側面も大きいと感じています。ベンチャーキャピタルという職業を通じて、一人でも多くの人が知り、学ぶことができる世界、自然や動物と適切に共生し、一人でも多くの人が人間らしい生き方ができる世界の実現を目指すことは、チームジェネシアとしてのアイデンティティそのものです。
4.最後に
投資判断する際に私たちが考えていること、議論していることを出来る限り言語化してみましたが、いかがだったでしょうか?
インターネットが広く普及し、技術革新が進む中で、世界は今大きな変革の時代を迎えていると感じています。さまざまな情報の可視化が指数関数的に進み、検索しさえすればありとあらゆる情報を得ることが出来る時代。自分がモノを探さなくてもソフトウェアがレコメンドしてくれ、自分が体験しなくても、誰かの経験談を簡単に見ることが出来る時代。もちろんこれらは便利で豊かな側面も多くありますが、その恩恵にただ身を委ねているだけだと、人類が存続・進化し続けるために不可欠な不確実性へのチャレンジ、言い換えるとイノベーションの総量を大きく減らすことになりかねません。
だからこそ、あるべき社会を描き、強い意志と覚悟を持って不確実性に向かっていくチャレンジが不可欠であり、それを実践しているのがまさにスタートアップだと思います。私たちは、今存在するものや目に見えるものの積み重ねの先に未来を見い出そうとするだけではなく、あるべき未来・来るべき未来を思い描く中で、高い志をもった起業家とともに不確実性に向き合い、私たち自身も圧倒的な当事者としてあるべき未来・来るべき未来の実現に向けてチャレンジし続けたいと思います。もし皆さんの周りに、これから起業しようとしている人、これからシードマネーの資金調達を検討している起業家がいればシェアいただければ嬉しく思います。
起業家へのメッセージ動画を撮りましたので、こちらもよろしければぜひ。
【シード調達のリアル #4 】 DD(デューディリジェンス)はこちらです。
よろしければこちらも是非!
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