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風景のレシピ #32 “海への坂道”| nakaban

「旅と記憶」を主題に絵を描いている画家のnakabanさんが、風景画の制作過程をレシピ化するこころみです。序文はこちら



風景のレシピ 32 “海への坂道”

調理時間:4時間
 
材料:
霧:全体的に
坂道:一本
建物:数軒
草地:適宜
波の音:適宜
街灯:一灯


1.静かな朝に霧を流し込み、よく広げる。
  目線を下方に向けて、下り坂になるように坂道を敷く。坂道はところどころ横道を分岐させ、階段状になっている場所もある。


2.時折届いて来る波の音を聴きながら、さびれた建物を数軒建てる。


3.風景の中に、僅かな光を得るために、一部の建物を石灰で化粧する。


4.建物や道を草で縁取る。空き地には草をこんもりと茂らせる。草地は塩分を含む霧に長年晒され、硬くこわばっている。


5.仕上げに街灯を一灯建て、夜のこの風景を想像してみる。


調理のコツ
*旅の初日のように


霧の粒子が見えるよう
海岸の石が使われたセメント道
街灯は電球が切れていた
できあがり。クリックすると拡大して見られます。


◎プロフィール
nakaban (なかばん)
画家。絵画、書籍の装画、文章、映像作品、絵本を発表している。
新潮社『とんぼの本』や本屋「Title」のロゴマークを制作。
著作に『ダーラナのひ』(偕成社)『ことばの生まれる景色』(辻山良雄との共著、ナナロク社)『窓から見える世界の風』(福島あずさ著、創元社)など。
好きなことは果樹栽培、ポストカード収集、そしてもちろん絵を描くこと。
本を読むのが遅い。
広島市在住。www.nakaban.com

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