SODE / Yuki Koyama

寝具専用のリネンウォーターブランドSODE(ソデ)の調香、運営をしています。 htt…

SODE / Yuki Koyama

寝具専用のリネンウォーターブランドSODE(ソデ)の調香、運営をしています。 https://www.instagram.com/sode_jp https://sode.base.shop/

最近の記事

たりない毛布

パリッとした空気の流れる肌寒い朝。 体に被さる布を、手繰り寄せても、手繰り寄せても、冷たい指先。 ひとりなのに、たりない毛布。 そこにいるはずなのにいないあなたを探しているような、 探しているけど見つからないことを期待しているような、 そんな整合性の取れない気持ちをSODEのSnuggleという香りで表現した。 肉体というよりは気配だけを感じたい。 そんな贅沢で脆い願望を表現するのに、Snuggleではアンブレットシードを使用した。 アンブレットシードはトロロアオ

    • 誰かの体温

      この夜に終わってほしくないと思っても、睡魔には勝てないもので。 瞼が落ち出し、 だんだん声が遠くなる。 飲みかけのコーヒーの香りも薄れ、 眠りに落ちるその瞬間、最後まで残るのは肌で感じる誰かの体温。 まだ寝たくないのに意識がどんどん遠のいて、寝落ちしたあの腕の中を思い浮かべながらSODEのDozeという香りを調香した。 その腕の中は、甘苦い体温と、どこか気の抜けた人肌の香りがする。 飾らない、隠さない、素の魅力が漏れる肌の匂いを表現するのに、Dozeでは合成ムスクを

      • 行ったことのない海

        現実から逃れられる空想の先は人それぞれあると思う。 私の場合、それは暖かくて、なんとなく全ての輪郭がぼんやりしていて、時間がゆっくりと流れる海であることが多い。 その海の情景は、私のなかでの桃源郷のイメージに近い。 それは、すべてが理想的で夢のような場所なのに、現実離れし過ぎていない不思議な場所。 そんな場所に一瞬ワープできる、そんな香りを思い浮かべながらSODEのDaydreamという香りを調香した。 暖かさ、甘さ、余裕を感じる香りの中に、理性では説明のつかない超自然

        • 冷たい朝

          目覚ましが鳴る前に、目が覚める。 肌寒い朝。 手繰り寄せた毛布に、あの人の気配を感じる。 SODEのSnuggleという香りを調香するにあたって、実体験や、誰かの体験談、あるいは妄想の中の、あらゆる「冷たい朝」を思い浮かべていた。 その情景はどれも、物理的にも、精神的にも、冷たいのだけど、不思議と心地よさや余裕みたいなものが漂っていた。 「冷たさ」にも色々ある。 メントールのような鋭い冷感 ユーカリのような青さと鼻が通るようなスーッとした冷たさ ミントのようなほんのり甘

          「香りがわからない」という感覚

          妊娠していることを告げると、多くの方が、条件反射のように、「匂い、大丈夫ですか(大丈夫でしたか)?」と心配してくださる。 妊娠中、特につわり中は匂いで気分が悪くなる、ということを多くの人が認識している、という発見。 幸い、私はフレグランス関連の香りでどうしようもなく気持ち悪くなるみたいなことはなかった(食べ物の匂いはダメなものがあったし、もう一生デカビタしか飲めないんじゃないかと思った時期はあった)。 けど、どちらかというと、より致命的なことに、つわり中は、いつもだった

          「香りがわからない」という感覚

          香りの余白

          先週まで、京都の藤井大丸さんでPOP UPをさせて頂いていたのですが、普段お客様と直接お話しする機会が少ないので、なんだか楽しくて長々とお話ししてしまう場面も多く、、、。お越しいただいた皆様本当にありがとうございました! 「SODEは寝具専用の香水。」 という紹介の流れで、なぜ寝具(布)用なのか、ということをお話しすることが特に多く、 自身の「布に香りをつけるということへのこだわり」と、お客様から得た観点を残したいなと。 日本古来の美しい香り文化として、着物に匂い袋を忍

          この香りでないと。

          京都滞在も折り返し。 2/25より京都の藤井大丸さんで出店させて頂いております。 たくさんのお客様にSODEを試して頂き、香りの感想を頂き、非常に刺激的な時間。 お越し頂き本当にありがとうございます! SODEの香りは万人受けする、使いやすい、香りではないかもしれないけれど、繊細でありながらどこか記憶に残る、印象的な、そんな香り。 それを目指したというわけではないのだけど、私の経験から膨らんだ、妄想や空想を香りにすると、そこに行き着いた。 私は生々しい記憶や、怖くて言葉にで

          この香りでないと。

          香料の質と個性

          SODEでは、繊細ながらも印象的な香り、を実現するために使用する香料の質を大切にし、世界中で生産される香料の中から最良のものを選んで取り揃えているメーカーから、香料を取り寄せて調香を行っています。 香りの良し悪しというのは主観的なものなので、そこの良否の評価はなかなか難しいけれど、経時的な香りの変化や、色の変化、刺激やアレルギーの問題などの視点から香料の質は大事になってくる。 そして、主観的とはいえ、やはり質の高い香料は、深みはあるけど雑味はなくクリアな香りがすると感じてい

          香料の質と個性

          二人と香り

          「好きな人同士は好きな香りが似てきたり、そもそも好きな香りが似てる人同士はやっぱり恋愛対象として気が合うとか何かしら関係性あると思いますか?」 先日、調香体験に来てくださった方から、後日こんな質問を頂き、もちろん論文とかもたくさんあると思うのだけど、個人的な感覚で考え、思いつきでつらつらと(エビデンスはないです)。 大学生の頃、隣の研究室の先生が、カップルは一緒に過ごしていると腸内細菌叢が似てくるので(生々しくなるので詳細は省きます笑)、自然と食の好みが似てくる、とい

          Yuki Koyama / The Perfumer

          いつかの恋人が纏っていた香水の香りを感じると、 何年も経った今でも、体温が蘇る。 香りひとつで、不器用な笑顔や、制服の手触りまで思い出される。 香りの記憶はすごい。 ある香りに触れることで、不意に誰かを、何かを、思い出し、 懐かしくなったり、心が温まったり、涙がこぼれたり、 香りは言葉では表現できない複雑な感情体験をもたらす。 感情を揺さぶる香りというのは人によって違うけれど、 その人にとって特別な香りに触れると、瞬間的にちょっと幸せになると思っている。 それは、今日淹れ

          Yuki Koyama / The Perfumer