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「香りがわからない」という感覚


妊娠していることを告げると、多くの方が、条件反射のように、「匂い、大丈夫ですか(大丈夫でしたか)?」と心配してくださる。
妊娠中、特につわり中は匂いで気分が悪くなる、ということを多くの人が認識している、という発見。
 


幸い、私はフレグランス関連の香りでどうしようもなく気持ち悪くなるみたいなことはなかった(食べ物の匂いはダメなものがあったし、もう一生デカビタしか飲めないんじゃないかと思った時期はあった)。
けど、どちらかというと、より致命的なことに、つわり中は、いつもだったら感じる香りを上手く感じ取れないことがあった。


「香水 ある人殺しの物語」(パトリック・ジュースキント)という小説に、超人的な嗅覚を持つ主人公が、自分の体臭は嗅ぎ取れないことに気付き狂い果てるシーンがあるのだけど、そこまでとは言わずとも、近しい感覚に陥った。
 

特にフローラル系の香りが感じにくくなり、ローズ・ド・メの希釈品が無臭に感じたりした。
 
劣化した?香り飛んだ?
 
とまずは香料を疑い、すかさず夫に嗅がせ、「めっちゃ香るよ」と言われ
 
あれ?あれ?なんで、、、?(絶望)
 
みたいなことはつわり中続いて、もちろんこの常時船酔いのような気持ち悪さも落ち着いてほしいし、嗅覚も戻ってきてほしいし、多くの妊婦さんがする「つわり いつまで」の検索を毎日のようにしていた。
結論、何を何回読んでも、「人による」に行き着くのだけど、それだけ必死なのだ。
 

嗅覚を戻すということは、正直もう自分ではどうにもできないので、とりあえずこの気分の悪さをどうにか、と。
 

これまた調べるとたくさん出てくるのだけど、つわり中は柑橘系の香りが少し気分を楽にしてくれると言われる。
私は持っている精油や香料を片っ端から嗅いだけど、
柑橘の中でもちょっとだけつわり中気分が楽になったのはグレープフルーツ。
逆にどちらかというと悪化したのが柚子だった。
あとは個人的にユーカリの香りが少し感覚を麻痺させてくれて、良かったかな。
 

ただ、昨日大丈夫だったものが急に今日はダメみたいなこともあるあるで、あの手この手で、ある日突然気持ち悪さが消えるまでやり過ごすという日々。
私はその日効きそうな精油をボトルのまま持ち歩いていたけど、ハンカチに垂らすとかもうちょっと軽量化しても良かった。
 
 
そんなこんなで、妊娠12週あたりでつわりは去っていき。
香りの感覚も戻ったし、妊娠前と何か変わったような印象もない。
 


しかし、あの「香りがわからない」という感覚は、妊娠とか関係なく、いつかまた何かのタイミングでくるのかもしれない。
少なくとも、感じ方は時と共に徐々に変化していく。
そう思うと、今の感覚で、作れるものを、表現しなくては、と少しだけ焦る。
 

 
そんなことを思った妊娠30週目。


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