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“売れる営業”の第一歩、「ソリューションセリング」を徹底解説

このnoteではBtoBマーケティングと営業戦略の立て方、個別の戦術について順序をたてて解説しています。

こちらのマガジンにまとめていますのでご覧ください。

マーケティングでリードを獲得し、育て上げ、ついに商談にこぎつけました。では実際の商談の現場で、どうやって営業をすれば受注率を上げられるのか。

今回は営業スキルの話です。

受注率10%の壁

弊社に寄せられるお仕事の依頼でかなり多いのが、「受注率を上げてほしい」というものです。要は営業メンバーそれぞれに対し、打率を上げるコーチをしてほしいというわけです。

BtoBで商材単価が100万円以上のものだと、一般的な受注率は10%弱くらいです。

ただこの数字は会社のフェーズによっても変わってきます。たとえば営業が1〜2人しかいない規模であれば、ホームページからの問い合わせが月に30件もあれば十分です。この状態であれば受注率はかなり高くなります。

なぜなら、そもそもホームページに問い合わせがきているくらいですから、「具体的に話を聞きたい」という見込みの高い案件が多く、受注につながりやすいから。

営業が少ないからマーケティング施策を行っていない。そのため営業はホームページに問い合わせをしてくる興味度の高い見込み客とだけ商談をする。ある意味、幸せなフェーズです。この場合は受注率が30〜40%までいくこともあります。

ただ会社が成長し、営業が10人以上いるような組織になったらどうなるか。ホームページからの問い合わせだけでは、それだけの営業にアポを渡せません。マーケティングにより大量のリードを獲得し、だんだんと商談につなげていきます。

こうなると受注率は適正値である10%弱に落ち着いてきます。

低い会社では5%を切ってしまうケースもありますし、100件商談をして3件も決まらない、みたいなケースもけっこう出てきます。

僕自身もそういう会社さんから依頼を受けて、毎月10人くらいの営業の方をトレーニングしています。基本的には、「まずは受注率を上げるスキルを身につけましょう」という話をしています。

営業レベル1、プロダクトセリング

以前のnoteでも軽く触れましたが、営業スキルにはレベル1〜レベル4まで、明確なランクがあります。これはセールスレベルと呼ばれ、「成果が出ないのはこのセールスレベルが低いから」と認識されるのが一般的です。

以下の図のように、セールスレベルは「レベル1」が一番低く、「レベル4」が一番高いのですが、実はほとんどの営業担当者はレベル1の能力しか身に着けていません。

出典:しげの_インサイドセールスプラス

レベル1のスキルは「自社の商品説明ができる」(プロダクトセリング)というものです。つまり見込み客に対して自社商品に関する情報を1〜10まで漏れなく話せる状態。

世の中にはレベル1でも売れる商品というものはたくさん存在します。

たとえばリクルートさんのようにブランド力のある商品を多く扱っている場合にはバンバン売れたりもします。

理美容関係であれば「ホットペッパー」、不動産であれば「SUUMO」、車であれば「カーセンサー」といったように、その業界関係者であれば知らない人はいないようなメディアで、業界No.1の商品力を持っていれば、レベル1のスキルでも一定ラインの受注率はキープできる。量をこなぜば成果も出てきます。

商品力を武器に、経験の浅い営業スタッフでも売り切るというのは立派な戦略のひとつですね。

ただ、レベル1の営業スキルしか持っていないと、スタートアップの営業として結果を出すのはむずかしいでしょう。

なぜなら会社の知名度が低く、商品力もそれほどないため、商品説明するだけではまったく売れないのです。

そうなるとレベル2やレベル3のスキルを身につける必要が出てきます。

自分は会社の看板で売っているのか、あるいは商品力で売っているのか、それとも自分の実力で売っているのか、ということを把握している営業マンは意外と少ないのでは、と思います。

実際、大手企業からスタートアップに転職して苦戦している方も多いです。

逆に、すごく小さな会社でどぶ板営業をやった後にちょっと知名度のある会社に転職すると、前より商品を売りやすいわけですから、すごく伸びるケースがあります。

じつは昔の僕は後者の立場でした。どこの会社でも扱っているようなコピー機を売っていた会社からキーエンスの新規事業会社に転職したときは、すごく売りやすかったです。オンリーワンの商品なので、まったく同じ商品で相見積にならないわけです。

ではブランドや商品力にかかわらず売ることができる「レベル2」「レベル3」の営業力とはどういうものなのか。

営業レベル2、ソリューションセリング

レベル2のスキルは「ソリューションセリング」と呼ばれます。どんなスキルなのかというと、「見込み客の課題をきちんとヒアリングして、その課題に対してピンポイントの提案をする」というスキルです。

商談では見込み客ごとに抱えている課題が違うので、当たり前ですが、その場である程度の対応力が求められます。レベル1とは圧倒的に違いますね。

商品説明は覚えればできますが、見込み客の課題をヒアリングして解決策の提案をすることは教えてもらったからといってすぐにはできません。

スポーツと同じです。学んだあとに何度も何度も反復練習しないと身につかないんです。

実はレベル1とレベル2には深い谷があるのです。

頭ではわかっているのになんでできないんだ…と凹む人もいますし、ここで多くの人がつまづきます。トレーニングを繰り返して体に叩き込むことで、スキルを上げていくしかありません。

商談の場でやることをレベル1と2でざっくりと比較してみましょう。

レベル1:自分たちの商品が提供できることを一通り話せるようになる

レベル2:見込み客の課題をヒアリングして、その課題を解決するために、10ある機能のうち2~3つをピンポイントで提案できるようになる

レベル2ができると、「この商品を買うことで自社の課題が解決できるんだな」というイメージがお客様の中で圧倒的に湧きやすいのです。

逆に1から10まで同じペースで話されると、自分にとって必要のない説明まで聞かされてしまうわけですから、営業の提案が刺さりづらくなります。

ここまで読むと、みなさん、「営業たるもの、みんなレベル2なんじゃないの?」なんて思うかもしれません。

そんなことは全然ないです。

たとえば「営業向きの人」と聞いてどんな人を想像しますか。

きっと体育会系で、話が上手くて、まわりに友だちがたくさんいて、社交的でコミュニケーション能力が高い…みたいな人を思い浮かべると思います。

でも実際はまったく逆だったりもします。コミュニケーション能力が高いがゆえに客先ですごく喋ってしまうので、「自分の知ってることを話す」というレベル1のスキルに長けていたとしても、お客様の話を傾聴できない。レベル2に求められることがまったくできていないケースが意外と多いのです。

なぜならレベル1のスキルには「商品」のことしか含まれていません。そこには「顧客」という視点がまったく入ってこないわけです。

あらためてこの表を。レベル1の説明には「顧客」という文字すらない。

レベル2のスキルを説明するために、僕がよく例に出すのがウォーターサーバーの営業です。

客先に訪問して、さて何と言うか?

「ウォーターサーバーを導入すると、いつでも冷たい水が飲めますよ」と語る。これはまさにレベル1の「プロダクトセリング」です。「南アルプスの天然水なので、とても美味しいですよ」「熱いお湯もすぐに出るんですよ」。どちらも同じです。商品について話しています。

ではレベル2の「ソリューションセリング」というスキルがあるとどうなるか。事前にお客さんに対して仮説を考えてヒアリングします。「毎朝忙しいだろう」「料理もほとんどしていないだろう」「男性で30代なら、朝コーヒーは飲むんじゃないか」などです。

そして相手によっては「毎朝忙しそう」だし、「コーヒーをよく飲みそうだな」という点に的を絞って課題解決の提案をしていくと決めてしまいます。

すると、実際にこんな会話が起きるはずです。

営業:毎朝朝食は食べていますか?
お客:家でつくるのは面倒だし、食べてもバナナやヨーグルトくらいです。
営業:そうですよね。毎朝コーヒーは飲みますか?
お客:時間があれば飲みますけれど、お湯を沸かすのが面倒なんですよね。
営業:でもコーヒーくらいは毎朝ゆっくり飲みたいですよね?

仮説を立てた上で、営業がストーリーに誘導しています。

そして最後に、「ウォーターサーバーを導入すると、たった10秒で毎朝温かいコーヒーが飲めますよ」という提案にもっていく。これが「ソリューションセリング」です。

お客様の話に耳を傾け、課題を見つけ出し、その課題ごとに解決策を提案する。これができないとスタートアップでは売れません。

たとえば、大手企業からスタートアップに転職してきた方。かなり期待されながらもなかなか結果が出ない場合は、自分がどの営業レベルにいるのか、一度確認してみるといいでしょう。意外とレベル1のまま実績だけ上げてきたという方も多いです。


レベル3は「ビジョンセリング」というさらに難しいスキルです。このスキルはキーエンスやセールスフォースのような国内最高峰の営業会社の営業マン全員が目指しているものです。

どんなものかはまた次回に。

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