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4/20開催レポート「私たちの知らない世界~刑務所や少年院を出所、出院した方々の自立をサポートする話。~」

4月から6月までの3回は「私たちの知らない世界」と題して、一般的にはあまり知られていない、知らない人が多いのではと思われるテーマを取り上げていきます。

第1回のテーマは「刑務所や少年院を出所、出院した方々の自立をサポートする話」お二人のゲストをお招きして話題提供していただき、参加者のみなさんと共に私たちの知らない世界を知ってみて、そして私たちにできることはあるのか、何ができるのかを考えました。

○ゲスト
笹川慎太郎さん
日本財団職親プロジェクト宮城支部 支部長/恵和興業株式会社
柴田光起さん
多賀城市保健福祉部次長兼社会福祉課長 

ゲストからのお話の前に、日本財団職親プロジェクトに掲載されている日本における出所者の現状について。

日本における出所者の現状
日本の検挙人員は2004年389,027件から減少し続けている一方で、再犯者率(1年間の逮捕者のうち、犯罪件数が2回目以上の者)が1996年27.7%から2016年48.7%まで下がることなく上昇を続け、罪を犯した者のうち、約2人に1人が再犯をしている計算です。
また、再犯者の70%が無職で、再犯時の有職者に対し無職者の数は約3倍の人数になっています。

日本財団職親プロジェクトホームページ

柴田光起さんは多賀城市社会福祉課で生活保護・困窮・更生保護・再犯防止・地域福祉関係などを担当されています。更生保護や再犯防止を担当している行政職員として、一市民として、再犯のない社会のために何ができるか様々なセクターの方々と情報交換・連携をされています。

少年院に入院している人ってどんな人?

昔と今の少年院出院者の違い
ー1960年~2000年 『反社会的』
特徴:ヤンキーが暴走・暴力行為等を起こし少年院送致
行動:社会に対する行き場の無い怒りを暴力や暴走で噴出させる
感情の発露対象者:他人社会
親も責任を取り少年が家庭裁判所に送られても身柄引受をした
ー2000年~現在 『非社会的』
特徴:虐待や育児放棄で社会に適応できない
行動:援助交際や貧困からの窃盗や大人に利用されるオレオレ詐欺。受け子やキャッチ
感情の発露対象者:自分。自傷行為を繰り返し常に自殺願望がある
親が引受拒否・親や身内がいない 親がいても更生出来る環境では無い

良心塾(大阪市)運営の黒川洋司氏の資料

少年院出院者の多くは家庭崩壊、支配的な親、虐待等の経験があり『愛情不足』を抱える若者が大半と言っても過言ではありません。本来なら、 幼少期には親から無償の愛を受け、 恵まれた 養育の中で愛着は形成させますが、この様な適切な 愛情を受けずに幼少期と言う大事な時期を育った。
幸せに生き、生活するための「家族(第1の居場所)」「学校・会社(第2の居場所)」が存在していない。

良心塾(大阪市)運営の黒川洋司氏の資料

再犯防止って誰がするの?
刑務所や警察の仕事と思っている方のほうが多いのではないかと思いますが、実は地域の方々がいろいろなことに取り組んでいます。

活動主体としての更生保護ボランティア
「更生保護」は、社会の中での立ち直りを導き、助け、再び犯罪や非行に陥るのを防ぐ仕組みです。その活動には、保護司や協力雇用主をはじめ、たくさんの人たちが関わっています。
信じてくれる人がいること。必要とされる場所があること。それは、更生への大きな支えとなります。更生保護は、社会に暮らす人たちが広く関わることで達成される取組なのです。
保護司 ○更生保護施設職員 ○更生保護女性会員 ○BBS会員
協力雇用主

多賀城市の柴田光起氏の資料

笹川慎太郎さんは建設系の廃棄物をリサイクルする会社、恵和興業株式会社の代表、そして職親プロジェクト宮城支部支部長を務められています。
笹川さんが職親プロジェクトを始めたきっかけや出所・出院された方の自立のサポートについて話題提供をしていただきました。

日本財団職親プロジェクト
『ひとりをみんなで支える』
刑務所出所者、少年院出院者一人ひとりの更生を参加企業みんなで支える、そして参加企業が抱えた課題や解決を参加企業や専門家みんなで考え、議論し、互いに支え合う。日本財団職親プロジェクトは、参加企業、法務省、矯正施設、専門家など、様々なメンバーで、再チャレンジできる社会、犯罪被害に悲しまない社会を目指しています。

日本財団職親プロジェクトホームページ

職親プロジェクトを始めたきっかけ

大阪の職親プロジェクトがきっかけ。
発起人のお好み焼き千房の創業者中井さんから出院者・出所者の支援に力を入れている話を聞いて、非常に素晴らしい取り組みだなと感じて、中井さんに職親プロジェクトをやりたいという話をしたというのがスタートした経緯です。自分一人ではできないため、会社の役員や社員にも職親プロジェクトをやってみたいんだと言う話をしたうえで少年院や刑務所から出院・出所した人を採用することになりました。

ー始めたのは最近ですか?
職親プロジェクト宮城支部は昨年10月に発足しました。現在は宮城と福島の企業中心に10社程参加しています。宮城の登録企業でも面接はしているが、実際に採用しているのは自社のみ。自社では今年3月から東北少年院を出院した人を1名採用しています。

職親プロジェクトは基本的には採用していることをあえてオープンにすることで、出院者・出所者を採用する取り組み自体を特別なことじゃないんだとどんどん広げていこうという趣旨があります。

現在1人受け入れをしていて感じること
社会生活をする方法が分からない、教えてもらっていないのかなと思っています。悪気があってやっているというよりは、そもそも世の中の中身や自分が発したことが周りにどのような影響を及ぼすか、自分がどうやって今生活できているか、そのような想像力が乏しいのかなと思います。
それは生活環境やそれまで付き合ってきた交友関係等に起因するものが非常に大きいのかなと。本人が今のままじゃダメだときちんと認識して人生やり直したいなと思っていて、尚且つ一生懸命仕事したいと思う限りは会社としても全力でサポートしたいという思いで付き合っています。


みなさんからの質問にも答えていただきながら、再犯のない社会、私たちにわたしたちにできることについて考えました。質問を少しご紹介します。

質問:行政や国、あるいは市民に求めたいことなどあれば教えてください。

笹川さん:受刑者が世の中に出て、再犯率が40何パーセント、その再犯のうちの7割ぐらいは無職の方というデータがあります。再犯を防止するという観点から、やはり企業がもっと受刑者就労支援について前向きに取り組むべきだなと思います。
職業の職に親と書いて職親。これは受刑者に対して住まいと仕事を提供するというのが大きなテーマになっています。一般の方に比べて住まいを借りることが難しいこともあると聞いています。不動産を持っている方々にも出所者がこれから更生していこうというところに対しての一定の理解をこれまで以上に持っていただくというのが非常に大事なことだと思います。
一番は企業が採用したり、住まいを提供してみんなで更生を手伝っていくというのが大事だと思っていますが、その前に出院者や出所者が社会に戻ろうとした時に意外と受け皿が少ないことが結構あります。出所者・出院者に対して完全に最初から受け入れてくださいというのではなく、目を向けていただくところからスタートする、まず興味を持っていただく今日のような場があると非常にいいのかなと思います。

柴田さん:無関心であること、放置していることが、再び犯罪を犯さざるをえない状況を生み、そのことによる代償を、社会的コストとして、私たちが負担しています。そういう意味では関心を持つこと。そして、偽らずに働ける社会を作っていこうと思っています。
罪に問われて服役されて戻ってきた方は、「履歴書どうしよう」と、正直に書いてもいいのか、書かなかったとしてもばれたら不利になるのではないかとびくびくしながら仕事をしているそうです。過去の自分を否定し続けて仕事をしてるのは心理的にも多分あまり良い状況ではないのではと思っています。そういう意味では笹川さんのような企業がもっと増えてくれることが再犯防止に繋がるのではないかと思っています。

自分を偽らずに働ける社会

「過去を包み隠さなくとも、かえって過去があるからこそ誰かに共感したり親身になることができ、彼らの過去が価値として輝くのでは」
受刑者等専用求人誌「Chance!!」発行
株式会社ヒューマンコメディ代表 三宅晶子さん

「協力雇用主制度は良いことをしているのに伏せている方が多い。私は支援するからには取り組みをオープンにしたいと考えました。・・・(中略)リスクはあるが、世に知らしめることによって、社会の受刑者に対する偏見を緩和させたい。」
千房株式会社 会長 中井政嗣

多賀城市の柴田光起氏の資料

参加者のみなさん同士、グループごとに感想や自分にできることなどを共有しました。

恵和興業株式会社 佐藤さん:まだ施設の中に居る方、外にいる方もそうなのですが、いろいろな形、いろいろな方向性、いろいろな方法、内容や立場を問わず、一般市民の方もそうですし、別に経営者でなくてもできる支援があるんだなということを今日勉強させていただきました。
実際1人受け入れた3月以降毎日気づくことや学ぶことが多いです。でもそれは自分が知らなかった側にいただけで、その中に一歩足を踏み入れることで、初めて知ることができたということを、オープンにするという職親プロジェクトのコンセプトに応じて、微力ながら、新しく興味を持ってくださる企業や団体に、そういった方々に少しずつでもお伝えすることができればというのを改めて感じました。

青葉区BBS会 会長 鈴木さん:私が特に印象に残ったと思っているのは、「自分を偽る事なく働くことができる社会」という部分。例えば履歴書やアルバイトなど仕事に就く際に必ず履歴書を書くと思いますが、その時に犯罪や負のレッテルが貼られている状況で、そういうことを会社の方に知らせて働けるところも少ないし、それと嘘をつくにしても限度があるので、本人が複雑な心境に陥ることがたくさんあるなと感じました。そのような人たちの受け入れを今後どのように進めていけばいいのかということを、これからの活動で考えていきたいなと思いました。

私たちの知らない世界~刑務所や少年院を出所、出院した方々の自立をサポートする話。~を少し知ってみて、私たちに何かできることはあるのか、ぜひ考えるきっかけになればと思います。


さて、次回の「私たちの知らない世界~あなたはヤングケアラーという存在を知っていますか?~」のお知らせです。

家族の世話や介護、家事、身の回りのサポートを行っている18歳未満の子どもたちがいます。子どもたちがその状況に至った理由や、現状はどうなっているのでしょうか。

ヤングケアラーの支援を行っているお二人の話題提供を受けて、
・様々な社会課題を知ることで、関心を深めていただく場です。
・話題提供を受けて、それぞれの立場で何が出来るか考えます。

「私たちの知らない世界~あなたはヤングケアラーという存在を知っていますか?~」
日 時:2023年5月18日(木) 19:00~20:30
話題提供:小林鮎奈さん(一般社団法人ヤングケアラー協会)/森川ゆとりさん(NPO法人アスイク コーディネーター)
対 象:興味のある方、どなたでも参加できます。みなさん意見交換に参加いただきます。
参加費:無料
会 場:仙台市市民活動サポートセンター 6階セミナーホール、オンライン会場(Zoom)
定 員:30名(Zoom会場は定員制限なし)
申込み:フォームからお申込み下さい 


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