出雲の糸撚魚|記憶に残るひと皿
戸隠で蕎麦を食べたあの日、
次の目的地に決めた島根県の出雲市。
どこか土井善晴さんのような雰囲気の店主と
目配りと気配りが抜群のおかみさん夫婦で営む小さなお店
久鶴(ひさづ)さんにお邪魔した。
料理は刺身、焼き、揚げ、米と汁。
地元漁師から仕入れたその日の魚を
店主と相談して決めていく渋好みのスタイル。
日本酒は地元の酒蔵、
旭日酒造か富士酒造しか置いていない。
この潔さが、またカッコイイ。
ちょうど予約時間までの街ぶらで
旭日酒造の酒蔵に寄って食前酒を味わったので
食事には富士酒造の出雲富士(純米吟醸)を選択。
さてこの日いただいたのは、
1. 昆布締めの白身と明太
2. 鯵のたたき
3. 糸撚魚(イトヨリ)の塩焼き
4. 甘鯛の唐揚げ
5. お吸いもの
食べたい魚と調理法を相談しつつ
ひと皿ずつ料理とお酒をちびちびやりはじめたものの
「おっ!(君よく)食べれるね」と店主に見抜かれてしまい
気がつけばフルラインナップ。
観光客には「のどぐろ」も事前予約で提供しているが
やはりプロの目利きで、その日いちばんの魚が食べたい…
そんな食いしん坊の右斜め上を泳いだのが
この糸撚魚の塩焼きだ。
地元漁師の一本釣りで
丁寧に締められたものだけを仕入れ。
さらに店主が綺麗に処理しているのがわかる
まっしろな白身。
美しい所作で、緩急をつけた塩うち。
中はふわっと、外はパリッと、仕上げる焼き。
お客さんと話をしたり他の作業をしていても
店主の耳はベストな焼き上がりを見逃さない。
ひと切れ口に含むと
ひろがるあまくていい香り。
おいしい空気の層を味わっているような
丁寧な仕事の積み重ねが結晶化した糸撚魚。
食べたあとの頭と骨は
おかみさんがお椀に入れてくれて
締めのお吸いものに再登場するのも嬉しい。
それなりのサイズ感だったのに
ペロリと食べてしまった僕を見た店主の
甘鯛を揚げても美味いよ、という誘いに即答。
ここからは熱燗にして
サクサク!ふわふわ!沁みる〜!の無限ループ。
おいしすぎて頭も骨も食べてしまった。
おなかいっぱいになったところで
さきほどの糸撚魚のアラの出汁が効いた
締めのお吸いものでほっこり。
少しドキドキする時価も
魚種とサイズごとに教えてくれるので安心。
お会計はビックリの良心価格でした。
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