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火星旅行は悪くない【ショートショート】【30日間毎日note:その20】

 茜の空が、蒼く暮れていく。

 天井と壁一面のスクリーンが映すのは、宇宙一の夕暮れ。

 窓の無い部屋の中央で、ベッドに寝そべって眺めていると、ここが留置所とは思えない。

⭐︎

 ある程度の資産と、好奇心があるなら、火星旅行は悪くない。

 着いた途端、逮捕される可能性は高い。火星では、ありとあらゆる事が犯罪だ。地球製の靴下を履いているのも、声を立てて笑うのも。

 俺は、くしゃみで逮捕された。

 だが、火星旅行は悪くない。留置所も、強制送還船も、金星の最高級ホテルよりも贅沢な造りで、保釈金は金星旅行より若干安い。

 貧乏人には薦めない。保釈金が払えなければ、留置所に行く前に、カプセル船で強制退去だ。星に帰れる保証は無い。

⭐︎

 突然、警告音と共に、スクリーンが真っ赤になった。無機質なアナウンスが響く。

「スパイ容疑。別件逮捕する」

 スパイは重罪だ。保釈は無い。勾留は無期限。

 俺は、顔に出さずに笑った。悪くない。

 火星の秘密を探るには、好都合。



(画像作成:清水はこべ
惑星素材:ibisPaint X)


田原にかさんの企画、「毎週ショートショートnote」に参加しました。

お題は「火星の別件逮捕」。

田原さん、毎回楽しい企画をありがとうございます。


 タイトル絵は、自作です。
 ibisPaintに内蔵の素材を使用・加工しています。 

 火星の夕焼けは青いそうですね。

 地球の山が、夕焼けで赤く染まるなら、火星の大地が、夕焼けで蒼く染まるのもありかな、と思って、赤い星の素材を、色調変更して、蒼く染めています。

 地球では見られない空の色を塗るのは、楽しかったです。



 ちなみに、火星旅行がテーマの、全く別の作品を、明日、nanaに投稿予定です。

 違う世界線の、違う火星のふたつの物語。

 楽しんで作ったので、楽しんで頂ける事を夢見ています。

お目に掛かれて嬉しいです。またご縁がありますように。