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映画化されていたなんて知らなかった

 大好きな映画は、幾つかある。でも、映像よりも文章の方が仲良しだ。

 多分、そのせいだろう。六月のハッシュタグ企画「#夏に見たい映画」というフレーズを見かけた時、ぱっと思いつくものは、何も無かった。これが、「夏に読み返したい本」だったら、色々思い付くんだけどなあ。

 ところが、ふと、本のタイトルと「映画」というキーワードで検索してみたら……出てくる事、出てくる事! びっくりした。こんなに色んな作品が、映画化されていたなんて!

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 そんな作品のひとつが、アストリッド・リンドグレーンの「わたしたちの島で」だ。

 リンドグレーンは、小さい頃から大好きで、今でも大好きだ。「やかまし村の子どもたち」「長くつ下のピッピ」「小さいきょうだい」「ミオよ、わたしのミオ」「親指こぞうニルス・カールソン」「はるかな国の兄弟」……他にも、思い入れがある作品だらけで、名前を上げ始めたら、切りが無い。

 でも、夏って言ったら「わたしたちの島で」でしょう。

 時代は1960年代。スウェーデンの首都、ストックホルムで暮らす一家が、夏のバカンスを過ごす為、離島のウミガラス島へ船で向かうところから、物語が始まる。

 おっちょこちょいで感激屋の父親、しっかり者の長女、いたずらっ子の長男と次男、あどけない末っ子。古ぼけているけれど、居心地の良い別荘。島に住む、気の良い隣人や、ちょっと生意気で可愛い子どもたちと過ごす、バカンスの日々。

 行った事も見た事も無い、北欧の夏の美しさを、目の前に思い描く事ができる、そんな一冊。

 検索してみたら「なまいきチョルベンと水夫さん」というタイトルで、1964年に映画化されていたらしい。私が生まれる前だ。そんなに昔の作品だったからだろうか、全く知らなかった。

 この映画、なんと、リンドグレーン本人が、脚本を手掛けているというではありませんか! しかも、2014年に、制作五十周年を記念して、日本でも公開されていたという話ではないですか! 全く知らなかったなあ……。

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 さらに、そんな作品をもうひとつ。アーサー・ランサムの「ツバメ号とアマゾン号」。

 アーサー・ランサムの作品は、実は、この「ツバメ号とアマゾン号」のシリーズしか知らない。だけどこれまた、小さい頃から大好きで、今でも大好きな作品だ。

 イギリスで出版されたのは、1930年。これまた、夏のバカンスの物語だ。湖のそばの農場に別荘を借りた一家の、四人の子どもたちが主人公だ。

 湖には島がある。島を見つけたからには、子どもたちはバカンスをそこで過ごしたい。だけど末っ子の赤ちゃんは小さすぎて、お母さんと赤ちゃんは身動きが取れない。

 四人は両親に頼み込んで、子どもたちだけで、夏休みを島でキャンプをしながら過ごす事を許される。帆船で島へ漕ぎ出して、冒険が始まる。

 作品に登場する「女海賊」が、めちゃくちゃ魅力的なんですよ! 影響されて、子どもの頃、よく、女海賊ごっこを妹に強要したなあ……。

 まさかとは思ったけれど、検索してみると、やはり映画化されているんですねえ。2016年にイギリスで公開。ついこの間じゃないですか! 日本では未公開らしい。

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 自分から色んな情報をつかもうと思えば、幾らでもつかめる昨今だ。ここに取り上げたふたつの作品も、観ようと思えば、多分、DVDを購入するなり、レンタルショップを探すなり、何らかの方法で観る事が出来るはず。

 でも、観たいのか、と、問われると、即答出来ない。観てしまって、イメージが壊れてしまうのは嫌だな……という気持ちは、正直、否定出来ない。どちらも原作を好き過ぎるから、どんなに素敵に映像化されても、納得が出来ないかもしれない。

 本の良いところは、読んでいる間中、本の中にすっぽりと入れる事だと思う。スウェーデンの一家の別荘で、私も一緒に夏休みを過ごす事が出来る。イギリスの子どもたちの船に乗り込んで、私も一緒に冒険をする事が出来る。登場人物と友達になれる。国も時代も年齢も超えて。

 映画は映画で、もちろん素敵だ。特に風景の美しさは、映画じゃないと伝えられない時もある。だけど、その中にすっぽり入る事が、私には、なかなか難しい。素敵な人たちを、外側から守護霊のように見守る感じになってしまう。それが少し淋しかったりする。

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 それでも……やっぱり、ちょっとだけ、観てみたいような……気もするな。

 夏が勢いを増す頃まで、観てみたいような気持ちが続いていたら……どうにか探して、観てみようかな……。

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