「影のないボクと灰色の猫」02-A15 エピローグ
この物語は、Twitterで自然発生的に生まれたリレー小説です。
aya(ふえふき)さんと一緒に、マガジンにまとめています。
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前回のお話(第十四章)
エピローグ
「痛ったあい!」
ひっくり返った自転車から、どうにか起き上がった時には、体のあちこちが痛んだ。
「マスターったら、無茶なんだから。私、自転車なんて、運転した事無いんだからね」
red stone cafe で求人を募集していると聞いたのは、一昨日、お店を訪れた時だ。
「へえ。私、働いてみたいな」
「あ、そう。じゃ、採用」
「え?」
そんなあっさり、転職が決まって良いんだろうか。
でも私は、子供の頃から、面白そうだなと思ったら、向こう見ずで突っ走ってしまう困った性格。いい歳して、未だに直らない。
勤め先はちょうど早期退職者を募集していた。昨日、退職届を出して、そのまま簡単に、今月末で退職が決まった。
余りまくっていた有給を取って、ひとり映画観賞会を決め込もうと、部屋でのんびりしていた私に、突然、マスターから電話が入った。
「初仕事を頼みたいんだけど。展望台へ向かう道の途中に、店の自転車が転がってるから、乗って持ってきて」
……よく考えたら、乗って持って行く必要は無い。押して行けばいいだけじゃないか。痛い思いをしてから気がつくなんて。
「前途多難かも」
独り言とは裏腹に、自分が笑顔になっているのが分かった。
私の人生は、新しく始まった様な気がする。
自転車を押して店へ向かう私に、海風が吹いた。
(完)
Twitterリレー小説「影のないボクと灰色の猫」
02-A15 エピローグ
書き手:清水はこべ(note、nana)
最後まで読んで下さった方、ありがとうございます。
小説は、ここで完結です。
が。物語は終わりません。
この物語、音楽や、声劇・朗読にもなっているのです。
小説のイメージの音楽もあります。音楽からイメージされた、小説と全く関係ないアナザーストーリーもあります。
何気ない一言から、クリエイターの数だけ、世界が広がっています。
次回以降、nanaに投稿された音楽や、声劇・朗読を紹介します。
どうぞお楽しみに!
★さあ、次は、音楽をお楽しみください。(nana|音楽)
お目に掛かれて嬉しいです。またご縁がありますように。