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「影のないボクと灰色の猫」02-A05 第五章 僕

この物語は、Twitterで自然発生的に生まれたリレー小説です。
aya(ふえふき)さんと一緒に、マガジンにまとめています。
詳細はこちら → はじめに

前回のお話(第四章)

第五章 僕


突然、楽しげに笑い声が響いた。

「ふうん、やっぱり見つけるんだね」

「僕」は、振り向きもせずに、そう言った。くすくす笑いながら。

のんびりした口調とは裏腹に、走る速度は全然落ちない。むしろ速度が上がっていく。

僕は、必死に追いかけながら、「僕」の声に耳を澄ました。

「流石だなあ。恩人の事は忘れないんだね」

恩人? 何の事だ?

「このままだと、あの子は辿り着くんだろうね」

走る速度は上がっているのに、「僕」はくすくす笑いながら、息ひとつ切らさない。

「まあ、辿り着いても良いんだよ。でも、邪魔はされたくないな。時間稼ぎはさせてもらわなくちゃ」

「僕」は足を止めずに、右手を頭上に上げて、指を鳴らした。

何処かで、自転車のブレーキ音がした。

「これで良し。さあ、もう少し急ごうか。あまり待たせても悪いし」

待たせる? 誰を?

「もちろん、ボクをね」


Twitterリレー小説「影のないボクと灰色の猫」
02-A05 第五章 僕

書き手:清水はこべnotenana


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