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「ラ」の音を舞台上で合わせる理由【オーケストラ雑学】

ライフワークのヴァイオリン演奏をはじめた時、オーケストラでのチューニングは毎回ワクワクする瞬間でした。
今でも、聴くたびに精神が研ぎ澄まされるようで、新鮮な感動を覚えます。
最近は、ASMRの動画も出ているようですね。

隠れファンも多い、このチューニングについて、ちょっとした雑学をまとめてみました。

ちなみに、「ラ」はドイツ音名で「A(アー)」と読みます。

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チューニングの順番は、楽団の方針やプログラムによって様々です。


このチューニング、もちろん奏者は楽屋で念入りに合わせています。
舞台袖でも、コンサートマスター(女性はミストレス)が巡回して、楽器ごとに合わせたりと、直前までチェックを欠かしません。
それでも、舞台上で、改めて全員で「ラ」の音を合わせるのには理由があります。

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舞台の上に立ち、まばゆいライトを浴びての一発本番勝負は、やっぱり毎回緊張します。舞台上でのチューニングは、平常心を取り戻すきっかけともなります。


「そうは言っても、実際大丈夫なんじゃない?」…私もそう思っていましたが、一度だけ、とんでもなくチューニングがズレていたことがあります。
途端に心拍数は跳ね上がり、数秒で周囲の「ラ」の音を頼りに調節しました。なんとか間に合いましたが、やっぱり油断は禁物だ、と教訓になった場面でした。

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こんなに楽器のサイズが違うのに、「ラ」の弦だけは共通していることに、改めて感動を覚えます。

管楽器も、同じように「ラ」の音を基準にチューニングします。

「オーケストラは社会の縮図」という表現があるように、楽器の違いは、そのまま人間社会の立場や考え方の違いにも通ずるものがあります。

それぞれの持ち場で、己の役割を全うする過程では、時に衝突や軋轢も生み出します。

そんな中、全ての楽器が一致する瞬間、それが「ラ」の音でチューニングする時です。

演奏会の開催も困難なご時世ですが、今度聴きに行かれる機会があったら、この「ラ」にまつわるストーリーを思い浮かべてくださると嬉しいです。

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