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繰り返される通園バス園児置き去り事件の教訓とは?親ができる対策とテクノロジーの役割


2022年9月5日、通園バスを使ってこども園へ通園した子どもが置き去りとなった事件は、世間に大きな波紋を呼びました。
親は子どもが安全に過ごせることと信頼して子ども園に通わせていたこと、園が所有し運用していた通園バスで起こった事件であることが、やはり同じ立場にある親にとっては大きな衝撃となったのです。

この記事では、通園バス事件の問題点、そして同様の事例に対して、テクノロジーがどのように対策を提供していくことができるのかについて解説します。

1. 通園バス園児置き去り事件とは?

世間で大きな話題を呼んだバス園児置き去り事件は、2022年(令和4年)、9月5日に静岡県牧之原市にある認定こども園「川崎幼稚園」で発生しました。この「川崎幼稚園」に通っていた3歳の女児が、バスで8時50分に登園した後、約5時間もの間、通園バスの中に置き去りにされ、同日14時10分ごろに発見されました。その後病院に搬送されましたが、その日のうちに死亡が確認されました。

では、なぜこのような事件が発生してしまったのでしょうか。
通園バスという一見安全な通園手段に思える方法をとっているにもかかわらず、幼稚園においてこのような事件が発生してしまった原因には、大きく分けて以下のような要因がありました。

1-1.「置き去り」が起きる理由1:車内確認の漏れ

まず、「置き去り」が発生した原因のひとつに「車内確認の漏れ」があります。
通園バスは18人乗りのワンボックスカーであり、この日は運転手を含む2名の職員と、6名の園児が乗車していました。事故を受けて9月7日に川崎幼稚園が開いた記者会見の場で説明した内容によると、「通園バスの乗降車時における人数確認」と、「複数人による車内点検」といった手順を怠っていたとされています。この日バスの運転手を務めていたのは園長(理事長)であり、通常は普段の運転手とは異なる体制でした。

しかし、車内確認や乗降車時の人数確認について、通常の手順として確認のフローがルーチン化されていれば、このような事件を防ぐことができた可能性は高いといえます。

1-2.「置き去り」が起きる理由2:職員間の連携不足

次に、「置き去り」が発生した原因に「職員間の連携不足」が挙げられます。
通園バスから幼稚園へ登園した際に、出欠確認が行われるのが普通ですが、このときは「最終的な出欠情報の確認」を怠っていたことが、同様に記者会見で述べられています。
もしこのとき、幼稚園にいる職員と、バスに乗車していた職員との間で最終的な出欠情報の確認が行われていれば、本来通園バスに乗車しているはずの園児がその場にいないことになるため、再度バスの中に残っていないかなど、次の確認手順に進むこともできました。

また、乗降車時の人数確認や複数人による車内点検なども、この日臨時で運転手を務めていた園長に職員間で連携が行われていたとはいえず、これらのコミュニケーション不全が、必要な申し送りを阻害していたとも見ることができます。

1-3.「置き去り」が起きる理由3:保護者との連携不足

そして、「園側と保護者との間の連携不足」にも、今回の事件の原因のひとつを見出すことができます。
本来、登園するはずの園児がいない場合には保護者へ連絡し、該当の園児の所在を確認する必要がありますが、この確認手順についても、今回の事件の日には怠っていたと説明されています。

そのため、保護者側では園児が通常通り登園しているという前提で行動しており、園側では「欠席した(保護者の管理下にある)」という思い込みが相互に働き、該当の園児の所在を誰も確認しようとしない状態となってしまったのです。

2.置き去り事件の発生は防止できるか

上記のように、いくつもの確認や連携の漏れが発生した結果、今回の事件では園児の死亡という最悪の結果を招いてしまいました。

また、この事件が大きく報道された後にも、類似の事件は繰り返されています。置き去り事件の発生はどのように防止するべきなのでしょうか。
そして、保護者側はこうした問題にアプローチしにくいという現状がありますが、保護者側ではどのような対策を取りうるのでしょうか。

2-1. 運転手・園職員・保護者の連携

この通園バス園児置き去り事件では、たとえバス内に子どもが取り残されたままバスの施錠がなされたとしても、その後にバス運転手・園職員・保護者の間で適切な連携がなされていれば、登園予定の園児が保護者のもとにもおらず(つまり欠席ではなく)、かつ園側でも所在を確認できていないことになり、必然的にバスの中や園の周辺を捜索するという行動につながった可能性が高いといえます。

しかしながら、運転手、園職員、保護者という当事者のいずれもが情報の連携を受けておらず、自身の所管する部分についてのみ注意を傾けていたことで、その隙間に園児が取り残されてしまったという事例です。
まずはこのような情報連携の仕組みを園内部と保護者との間で構築していくことが事故の防止につながることは間違いありません。

2-2. 子ども自身が脱出できるよう教育

バスに取り残されたとき、子どもは自分自身でなんとかして脱出しようと試みたのかもしれません。ただし、発見された園児は、日頃父親から「バスでは先生に言われるまで静かに座っていなさい」と教えられていたために、その言いつけを守って最後までバスに残っていた可能性が指摘されています。
施錠されたバスから脱出することは、大人であれば窓の破壊などが考えられますが、幼稚園児には難しいでしょう。

奇しくも、この9月の事件後に類似の事件として、岩手県一関市の市立小学校に通う1年生の児童がスクールバス車内に取り残される事件が発生しました。この事件においては、児童が自らバスのクラクションを鳴らし、気が付いた運転手がバスの扉を開放したことで最悪の事態は避けられました。

このように、クラクションを鳴らすなどして周囲に気づかせるよう教育するというのは、最後の手段ではありますが、子どもへの教育をしておく価値があるといえます。

3. 置き去り事件を防ぐためにテクノロジーができること

通園バス園児置き去り事件では、複数の職員が関わっていながら、事故を未然に防ぐことができませんでした。
このように、人間の仕事では「完璧」を求めることは難しく、どうしても見落としや怠慢、漏れが発生することがあります。このようなヒューマンエラーを解消するためには、テクノロジーの活用がひとつの対策となりえます。

3-1. スマホへのアラートは保護者にとっての安心材料に

子どもがバスに置き去りとなることに対して、「スマホを持たせていれば」と考えた親もいたでしょう。
しかし、今回の園児はまだ3歳でした。たとえキッズケータイ・キッズスマホであっても、親や園に電話をして自分の状況を的確に伝えられるかというと、必ずしもそうは断言できません。

しかし、テクノロジーには人の手を介在させずに問題を解決する手段もあります。
たとえば忘れ物防止タグのように、既定の距離や時間によって、スマホへ通知・アラートを送信するなどの単純な動作で、保護者が異常を察知するような仕組みがこれに対応するテクノロジーのヒントとなります。

3-2. 「スマモリ」新機能ではGPSを活用したアラートの送信が可能

通園バス園児置き去り事件のようなケースでは、GPS(位置情報)が解決の糸口となる可能性が高いといえます。
園児がバスに乗って幼稚園のバス駐車場まで行ったものの、そこから長時間動いていない、登園時間を過ぎているのにまだ駐車場にとどまっているなどのケースでは、親がそれを通知で知ることができれば、置き去りが発生している可能性を疑うことができます。
スマモリ」に新たに追加される機能は、学校・塾など、あらかじめ設定した場所に子どもが出入りした際に、親にアラートを送信するように設定することができる、GPSを使った機能となります。

この機能を使えば、親は子どもが幼稚園や学校・塾などに予定通り到着したことを知ることができますし、逆に予定時間を過ぎてもアラートが送信されてこない場合、該当の場所に到着していない、道中でなにかの異常が発生した可能性があることをいち早く察知することができるのです。

繰り返される通園バス園児置き去り事件の教訓とは?親ができる対策とテクノロジーの役割まとめ

通園バス園児置き去り事件においては、人と人との情報連携や確認不足・漏れが重なり、園児の尊い命が失われるという最悪の結果を招いてしまいました。もちろん、こうした事件が二度と起こらないよう、情報連携やコミュニケーションの見直し、業務フローの策定などが行われるべきことは言うまでもありません。

しかし、人間の仕事には常にヒューマンエラーの危険性があります。こうしたことに対して、テクノロジーがその間隙を埋められる可能性があります。「スマモリ」の新機能は、こうしたテクノロジーによって事件・事故の発生を未然に防ぐための一つの有効な手段となるでしょう。