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作詞家:銀色夏生の言の葉

 giniro no kotoba


 私が、最初に出会った銀色夏生さんは、作詞家”銀色夏生”でした。


 その頃、”大沢誉志幸”さんのヒット曲の作詞を手掛けていて

 『その気×××(ミステイク)』

 ダウンさせる手口を
 覚えた困った女さ
 Lady Mistake
 俺の胸を焦らしてその気


 『そして僕は途方に暮れる』

 ひとつ残らず君を
 悲しませないものを
 君の世界のすべてにすればいい
 そして僕は途方に暮れる

 

 他にも『恋にjust can't wait』や『GO GO HEAVEN』等々、

 当時の”大沢誉志幸”さんはトガった雰囲気があって、”銀色夏生”さんの感覚的な歌詞がよく合ってたんですよね。自分も、けっこう、このコンビの曲が好きだったのを憶えています。



 そんな自分が本屋で見つけたのが

 『これもすべて同じ一日』


 へ~、”銀色夏生”さんの詩集なんだ。

 文庫本なんだけど、他の本とは違って、白地で、コーティングされてない紙の手触りを意識した装丁に魅かれて購入しました。

 実はこの初版には「著者近影」が掲載されてたりしました。
 今の”銀色夏生”さんは、お母さんエッセイストとして活躍されてますが、当時はメディアに露出することなく、男性か女性かもわからない中性的なイメージの作詞家さんだったりしたのです。

 「著者近影」で初めて見た”銀色夏生”さんは、ショートヘアのかっこいいお姉さんみたいなイメージだったのを憶えています。

 その後、重版されたものでは「著者近影」が削除されていたので、けっこう貴重な写真だったのかもしれません。



 ”銀色夏生”さんの歌詞は、『その気×××』型の感覚的なものが多かったと思うのですが、ポエムの方では、自分の心のうちを素直に綴った『そして僕は途方に暮れる』型のものが中心でした。

 掲載されてる写真もセンス良くて、本棚に置いとくといいかもって感じだったんですよね。


 その後、2作目として刊行されたのが

 『わかりやすい恋』


 ちょっと男子が買うには抵抗感を感じたんですが、モデルの女の子が可愛くて買っちゃったんですよね。

 カバーには”銀色夏生”さんから、こんな言葉が寄せられていました。

言葉は暗号です。
ひとつの言葉が、いろいろな意味に理解され、誤解され、すれちがい、人々は思いを伝えあいます。
誰が、暗号をといてくれるでしょう。なぞなぞは、むずかしいほど解くかいがあります。
会話は一瞬の芸術だから、シャボンのように消えようとも、星のように光ろうとも、見える人にしか見えません。
見えてしまえば意識の革命です。
好き、ということは、一度言えば、それでいいのです。

 ちょっと思春期の少年少女の心をノックする感じだとは思いませんか?

 「言葉は暗号」や「見えてしまえば意識の革命」とか、深くは理解できませんでしたが、そんな言の葉が集まって木となり、木の総体として伝わってくるような感じだったのです。



 その後も

 『LESSON』

私達は迷わずに歩いていきましょう。
もう、ここまで来てしまいました。
月日は、すぎていきます。
あの頃に帰りたいなんて言わないで下さい。
今、目の前にいるのが私です。
今、目の前にいるのがあなたです。
どうしようもないことは、もうどうしようもないでしょう。
笑えることが素敵です。


 『Go Go Heaven の勇気』

生まれることも歴史です。失うことも歴史です。
私たちが最も大切にしなければならないことは、私たちの本当の目的です。
私たちの目的は、素晴らしく美しく悲しいほど純粋だったのではなかったでしょうか。
そのためになら生きていることを誇れるという目的だったのではないでしょうか。
私たちはそのことをうっかりと忘れないためにこそ、お互いに存在しているのです。


 と、続いていくわけなのですが

 今、思うと、思春期の自分にとって、初期のこの4冊には、けっこう影響されてる気がします。


 もしかすると、自分がここで ”note” してることも、その影響の一つなのかもしれません。