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全部観たいクリストファー・ノーラン

 Christopher Nolan

 気に入った映画と出会ったら、同じ監督の作品を追いかけるのも楽しいもので、自分は、好きになった映画監督の作品は、全部観たくなるタイプなので、そんな監督さんを "note" していきたいと思います。


  今回は稀代のフィルムメーカー、クリストファー・ノーラン監督について

クリストファー・ノーラン (1970/7/30 - )
 現在において、作家主義と大作主義の両立に成功している監督の一人。
 イギリス・ロンドン出身。

【監督作品】
1.フォロウィング (1998)
2.メメント (2000)
3.インソムニア (2002)
4.バットマン ビギンズ (2005)
5.プレステージ (2006)
6.ダークナイト (2008)
7.インセプション (2010)
8.ダークナイト ライジング (2012)
9.インターステラー (2014)
10.ダンケルク (2017)
11.TENET テネット (2020)


*  *  *  *  *


(クリストファー・ノーランが観たくなる理由)

 とにかく、どの作品も上映時間が長い!
 話が複雑で見始めはよくわからない!
 なのに、映画制作会社は資金をかける。___

 これだけ資金をふんだんに使った大作を作り続けながら、作家性を前面に押し出している映画監督は、現代において、ノーラン監督以外に見当たらないですよね。
 どんな有能な監督であっても、浮き沈みが多少はあるものですが、これだけの高いアベレージを保てているのは奇跡的なことかもしれません。
 そんなノーラン監督の魅力について ”note” します。

 



◎非直線的な物語構成

 ノーラン監督といえば、異なる時間軸のエピソードを非直線的につないでいく手法が有名な監督さんですが、その発想のスケールが、ちょっと予想の斜め上を行ってる感じなんですよね。
 まずは、時間逆行ものから.....

①時間を逆行させる『TENET テネット』と『メメント』

 最新作の『TENET テネット』は、未来から時間を逆行させる技術によって遡ってきた組織との闘いを描いた作品です。
 逆行していく時には、周りの人や車が後ろ向きに走ってたりする様子が描かれてたりします。まあ、それぐらいなら、想像できる範囲なのです.......

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 観客は、映画と一緒に、通常の時間軸を過ごしていくのですが、途中、逆行する敵と遭遇したり、逆行する車が登場したりする他、何度か ”ん?” と、引っ掛かりを感じさせるシーンが用意されています。
 実はこの『TENET テネット』では、物語の折り返し地点のような場面があって、後半は逆行軸の物語になっていくのです。
 ポスターなんかでも、主人公の二つのイメージを組み合わせたものになっていますが、酸素マスクみたいなのを付けている方が逆行世界での主人公になります。

 時間が逆行していく中で、観客は、前半、引っ掛かりを覚えたシーンの意味が理解できていく構成になっているのです。


 これまでになく複雑な構成なのですが、カタルシスはあるし、何よりも順行世界と逆行世界が混じりあう、カーチェイス、格闘、最後の作戦等々、今までに観たことのない映像を体験できることは間違いないです。

 観終わった後でも解らないことが多くて、もう一度、はじめから観たくなるのですが、そもそも、こんな映画を撮ろうと考えるノーラン監督の頭の中が凄すぎる!と、思ってしまいました。


 この時間を遡るプロットは、監督第二作目『メメント』でも見られたものです。

およそ10分間しか自分の記憶を保てなくなった男レナード。彼は妻をレイプし殺害した犯人を捜し出すため、ポラロイド写真を撮り、メモを取り、大事なことは身体に入れ墨で書き記すなどして必死の行動を始める…


 物語としては、時間を巻き戻したエピソードを遡っていくことで、事件の原因が語られるものなので、実際に逆行していく姿を描いた『テネット』とは、少し違います。

 ですが、遡っていっても、アレ??みたいな感じなんで、モヤモヤ感はこちらの方が上かもしれませんね。

 原因に向かって話が進んでいくという ”プロット” の部分では、『テネット』の原点にこの作品があるのは間違いないと思います。


②違う時間軸をつなげる『インセプション』と『インターステラー』

 次に、時間の流れ方の異なる世界をつなげていくタイプ

人が夢に入っている時に潜在意識の奥底にまで潜り込み、他人のアイデアを盗む出すという、犯罪分野においては最高技術を持つスペシャリストのコブ。しかし彼はその才能ゆえに、最愛のものを失う。そんなコブに、「インセプション」と呼ばれるミッションが課せられる。

 人の夢に入り込むというのは、SFの中では目新しい題材でないものの、その夢に階層があって、現実の世界とは時間の流れる感覚が異なる(現実世界の10時間が、夢の中の1週間)という『インセプション』の設定は斬新でした。

 ミッションの中、夢の第1階層で車が橋から落下してる間、第2階層ではホテルでの攻防が行われ、さらに第3階層では雪山での戦闘と、それぞれ時間の流れが異なる層で、タイムリミットをつないでいく構成は、なかなか複雑ですが緊迫感抜群でした。
 この映画を観た時も、ノーラン監督の頭の構造ってどうなってるんだと思いましたね。


地球の寿命が尽きかけていた時代。居住可能な新たな惑星を探すミッションの先導者に、元エンジニアでシングルファザーのクーパーが選ばれる。彼を待っていたのは、想像を絶する未開の宇宙空間だった…。

 『インターステラー』の場合は、一般相対性理論に基づく時間の流れ方の違いによるズレ(強い重力の中では時間の進みが遅くなる)を組み込んだ映画です。
 一般相対性理論は、科学的考証によるハードSFの基本なので、あまり新しいわけではないんですよね。
 ただ、つなぎ方によってドラマが生まれ、感動的なエンディングを迎えるという、そのプロットに驚かされるのです。

 宇宙にいる父親と、地球で待つ娘の関係が、物語の中心となるのですが、クライマックスでは、未知なる高次元世界を通じて時空をつなげるという力技を見せてくれます。
 最終的には、宇宙でも「愛」は時空を超える、というベタな展開であるのですが、これだけのスケールでやられると涙しちゃいますよね。


③ドキュメンタリーな『ダンケルク』

ダンケルクの海岸に追い詰められた何十万人もの英仏連合軍に敵の軍勢が迫りつつある状況の下、物語は陸・海・空を舞台に展開される。

 『ダンケルク』では、兵士たちが救援を待つ陸視点の一週間、民間船が救援に向かう海視点の一日、ドイツの戦闘機を迎撃する空視点の一時間を並行して描いています。
 あまり説明もないので、観客は三つの場面のつながりにとまどいながら観てるのですが、クライマックスに向けて、それぞれの時間軸が近づいてくみたいな構成でした。

 そのリアリズムについて、全世界で絶賛されていますが、個人的には、映画として観ると、あんまり面白くないんですよね。
 ストーリーも淡々としていて、キャラクターも薄く、限りなくドキュメントに近づけることに挑戦したような映画なので、そういう視点で観ると楽しめる作品です。



◎迫真のリアル映像

 冒頭、"稀代のフィルムメーカー" と称しましたが、ノーラン監督は、デジタル撮影ではなく、現在もフィルム撮影にこだわっている監督の一人です。   IMAXフィルムカメラ(通常より面積の大きい70㎜フィルムで撮影)も使って高解像度のリアルにこだわっているのです。 

 しかも、可能な限り、本物を使う主義らしく、CGや特撮も最小限で行うという事.......

 ん、じゃあ、あのシーンは、どうなの?
 と、思うこともあるかもしれませんが、たとえば『ダークナイト』の病院爆破のシーン

 一発撮りなんでしょうね.....

 その他の爆破シーンも、ほとんど本物です。

 

 『インセプション』での部屋がグルグルするやつなんかも


 グルグル回る部屋を作成して、実際に回しながら撮影してるんです。

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 すごくアナログな手法で撮影されているのですが、そのスケールが大きすぎて、観ている側は圧倒されちゃうんですよね。


 そう考えると、『インターステラー』なんかでも、SFの割には特撮部分は少ないのかもしれませんね。


  この本物にこだわることで、すごい制作費がかかってるんだと思います。でも、妥協無く取り組むことで、観たことのない映像を作り上げてるんですよね、......ただただ、凄いです。

 最新作の『テネット』でも、本物の旅客機を突激させたりと豪快な場面が登場するのですが、何よりも、あの逆行映像は、どう撮影したのかが気になります。きっとアナログな手法で撮られているんだろうと想像できるのですが、そう考えると、かなりの手間暇がかけられてるんだと思うのです。




◎ダークナイト・トリロジー

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 ノーラン監督が、現在のように作家性を出した大作を制作できるのは、この『ダークナイト・トリロジー』の成功があったおかげです。

 これまでのバットマンを、ダークでより現実的な感じで、リアリズムに基づいた映画にしたことが成功につながったわけですが、ヒーローであるバットマンは、正義の使者というよりも、悪に怒りを燃やす人間として描かれ、常に闇の感情に苦悩しています。

 特に『ダークナイト』では、ジョーカーのように悪の感情の思うままに行動できるわけでなく、トゥーフェイスのように善と悪の顔を使い分けることもできず、半端な蝙蝠として描かれていて、最後にバットマンの取った選択とは.....といった感じです。
 トリロジーは完成したドラマとして観応え十分なので、『バットマン ビギンズ』から通して観ることをお薦めします。


 また、わきを固める俳優さん達が魅力的で、各作品の敵役のリーアム・ニーソン、ヒース・レジャー、トム・ハーディなど、いい役者さんを使ってるんですよね~

 ただ、個人的には、トリロジーを通じてバットマン側の人間として登場する3人が好きなんです。

 ゴードン刑事役のゲイリー・オールドマン
 昔のエキセントリックさは影を潜めましたよね~渋いです。

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技術研究開発者フォックス役のモーガン・フリーマン
安定のフリーマン

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そして執事アルフレッド役のマイケル・ケイン

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 この3人がそれぞれいいんですよね。
 特にマイケル・ケインが演じた、時には厳しいことも注進する父親的な執事アルフレッドがお気に入りでした。
 何かですねベタベタしない温かさがあるんです、『ダークナイト ライジング』では泣かされてしまいました。


*その他のノーラン作品

『フォロウィング』

作家志望のビルは創作のヒントを得ようと、通りすがりの人を尾行する生活を送っていた。ある日、他人の生活を覗き見るのが趣味な男と出会い、思わぬ事件に巻き込まれてしまう。

 監督デビュー作ですが、これも、ノンリニア系のやつです。
 なかなか見かけることが少ないんですよね。なので、近所のレンタル屋にあったら、即、借りておくことをお薦めします。


『インソムニア』

24時間太陽が沈まない街、アラスカのナイトミュートで17歳の少女が殺された。しかし、それは始まりに過ぎず、やがて第二の殺人が起こる…。

 全作品の中で、唯一、ノーラン監督が脚本に参加していない作品です。
 そのため、ノーラン監督の作家性は今一つ薄いんですが、アル・パチーノとロビン・ウィリアムスの競演を楽しみましょう。


『プレステージ』

2人の天才マジシャン、アンジャーとボーデンはライバルとしてしのぎを削りあっていたが、ある舞台でのマジック中、アンジャーが水槽からの脱出に失敗し、ボーデンの目の前で溺死する。翌日、ボーデンは殺人の罪で逮捕され、死刑を宣告されるが―。やがて明らかになる驚愕の真実とは!?

 ノーラン監督が脚本に関わっていますが、珍しく原作付の作品です。
 他の作品のレベルが高いため地味な作品に見えますが、どうしてどうして、意外な結末の待つ作品です。
 原作となったクリストファー・プリーストの「奇術師」も傑作です。


*  *  *  *  *


 ノーラン監督作品は、とにかく迫真のリアル映像にこだわって作られているので、映画館で観たくなる映画であるのは間違いないです。

 最新作の『TENET テネット』では、映像もそうですが、いつも以上に音楽が重低音で迫力満点で、まさに体感する映画となっているので、普段、映画館に行かない人も、ぜひ映画館で鑑賞することをお薦めします。