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【architecture】東京カテドラル聖マリア大聖堂|丹下健三

いよいよ東京オリンピックがはじまった
一生に一度や二度しかない日本でやるオリンピックである
せっかくならば楽しみたいと思う


前回の東京オリンピックは1964年の57年前である
その時つくられたのが国立代々木競技場である
原宿駅からすぐの場所にあるこの競技場は建築家丹下健三氏による設計である

(写真はHPより引用)

丹下健三氏は広島平和記念資料館や香川県庁舎、大阪万博のお祭り広場、現在の東京都庁舎(旧東京都庁舎も同氏による設計)、フジでルビ本社など数多くの公共建築を手がけたことで有名だ

国立代々木競技場はその丹下健三氏の代表作のひとつである
この建築によって日本の建築技術とそのデザインは世界レベルに到達したと言われるほど秀逸な建築である
またこの建築により丹下健三氏は文字通り世界のTANGEと呼ばれるようになる

そんな一大イベントの傍らではあるが、丹下健三氏のもう一つの代表作とも言える建築の工事が進められていた

それが『東京カテドラル聖マリア大聖堂』である


はじめにお伝えしておくが、この建築に私はもう何度も訪れている
日本の近代建築の中ではトップクラスであることは間違いない
何度訪れてもこの神聖な建築には言葉を失うほどの感動がある


この建築が完成したのが1964年12月である
オリンピックの最中も着々と工事は進んでいた

場所は有楽町線の江戸川橋駅から徒歩15分とあるが坂道な為かなり大変ではある
目白駅から学習院大学でも見学してバスで向かうのがオススメである

有名人が結婚式を挙げたりすることで知られる椿山荘がちょうど目の前に位置する


さてカテドラルであるが、外観は鳥が羽を広げているような形である

(写真はHPより引用)

シェル構造と言って三次元の曲面でできた複雑な構造である
俯瞰して見ると十字架の形をしているのが特徴である

外観からはあまり圧迫感を感じない
むしろコンパクトな教会に見える

エントランスを入ると受付からホールまで低い天井が続いている
そして聖堂に入ると一気に巨大な空間が現れるのである
最も高いところで天井高さ40m、収容人数500名の壮大な建築だ
外部からは想像出来なかった大きな空間がそこにある



外部からの光はシェルの間に設けられた縦長の窓からとトップライトからの光である

薄暗い祈りの空間に優しい光が差し込む

最も注目してもらいたいのは、壁である
鉄筋コンクリート造でつくられた曲面の壁は荒々しく型枠の木の木目がそのまま残っている
現代のコンクリート打放しの壁は非常に綺麗なものが多い
しかしこの建築は、その当時の最先端の技術をもってつくられたとは言え一枚一枚微調整をしながら職人さんが型枠をつくったのだろう
建築とつくり手の死闘とも言えるような気迫が壁の荒々しさから伝わってくるのだ

現代の住宅の中にはプレハブ工法と言って工場でつくったユニットを現場で組み立てるものなど一日でほぼ完成してしまうようなものまである
こういった建築技術は効率化や経済性を考えると必要な技術である

一方で、建築は機械がつくったものという勘違いが生まれてしまっているようにも思う
完璧な精度で、寸分の狂いのない建築が出来上がることはほぼない
建築は今も変わらず人の手でつくられた文字通り手作業の産物である

手作業でつくられた建築には、つくり手の思いや情熱が宿っている
当然そこにはミスや迷いの痕跡が残る

東京カテドラル聖マリア大聖堂には、つくり手の痕跡が荒々しいコンクリートの中に痛々しいほど表現されている

この建築が今もって人々から愛されるのには、このつくり手の情熱が建築に宿っているからだろう

構造やディテールなどの難しい話は置いておいて、純粋にこの建築を味わってもらいたいと思う

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