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ブラジルの魔法使いのおばあさんの話

トップ画像:Gordon JohnsonによるPixabayからの画像

私がまだ二十歳かそこらだったころ、
つまり、まだブラジルの学生だったころの話です。

「コップを水晶玉代わりに使って、将来結婚する相手を見せてくれる
bruxa(ブッシャ=魔法使いのおばあさん)がいるんだって。
一緒に行ってみようよ」

そう日系の知人に誘われました。

「魔法使い率がやけに高いブラジル」(笑)では、
日本人の女子トークだったら、
「○○の▢▢が美味しいんだって、行ってみようよ」
というのと同じ感覚&頻度で
この手の話が舞い込んできます。>爆!

そこで私はちょっと気になった点について訊ねました。

「えっ?『見てくれる』じゃなくて『見せてくれる』なの?!」

すると、

そうなのよー。最初は親戚の子が行って『見えた、見えた』って
言うんだけれど、親族が誰も信じなくってさ、
そこでね、
うちの結婚しているお姉ちゃんいるでしょ?
そのお姉ちゃんと友達で、二人とも独身だと偽って
見せて貰いに行ったの。
そうしたらね、
ちゃんと旦那の姿がコップの中に浮かんで出たんだってー!
しかも、その時いる筈の場所でしている筈の仕事をしていたんだってー!」

とのこと…!

*****

というわけで、その人ともう2名の知人とで行ってみることになりました。

そこは、ファベーラ(スラム街)一歩手前の貧困層が住む地域で、
恐る恐るドアをノックすると、

しばらくして、
寝ていたのか、うとましそうにドアを開けてくれたのは、

まさに「魔法使いのおばあさん」としか形容の仕様がない
ちょっと怖めの顔をした老女で、

「んっ、何?結婚相手を見たい?
うーん…、今休んでたのよ…、
ま、いいんだけれど…。
あっ、一人○○クルゼイロだけれど、いい?」

と、てんでやる気はないけれど、せっかく金ヅルがやってきたのだからと
私たちを家の中に入れてくれました。>笑

※ 余談ですが、「クルゼイロ」とはブラジルの当時の通貨の名称です。
  ブラジルは、笑っちゃうほどデノミを経験しており「1942年から1994年
  の52年間で275京分の1のデノミネーションを行ったことになる」などと
  言われても「それっていくらよ」って感じです(笑)。

  詳しくはこちら。↓

*****

家に入ると、いきなりキッチンで、
「こと」はそこで行われます。

魔法使いのおばあさんは、おもむろに
ごく普通のガラスコップに水道水を入れたかと思うと、
煙草に火をつけて、

一口吸っては、煙をコップに入れ、
煙が逃げないよう手でコップの口を塞ぎながら
何か呪文を唱えます。

これを数回繰り返し、
コップの中を覗き込んでは確かめ、

やがて

「ほら、出たよ」


と見せてくれます。

一緒に行ったのは4人、実際見てもらったのは3人、

一人は結婚こそしてはいないもののパートナーがいる人で、

「彼とは違う知らない人が見えた!」

と、びっくりしており、
困惑して、それ以上のことは語ってくれませんでした。

もう一人は、

「何か見えた気もするんだけれど、うーん…、よくわからない」

と、納得いかない様子…。

で、私はというと、

すごい剣幕で怒っている見知らぬ細身で眼鏡をかけた男性
の姿が見えたのですが…、

「写真のように見えた」、「コップの中で動画のように動いていた」
と聞いていたのに…、

私の見たのは…、


何故か



マンガ絵だったんです! >爆!


で、他の人も、てんですっきりしていない様子だし、

私も、
どう考えても見たのは「マンガ」だし、
何かトリックみたいなものだったんだろうなぁ~

と思い、

その後誰もその話をしなくなり、やがてその人達とも疎遠になってしまい、

とうにそんなことは忘れた頃、私は

細身で眼鏡を掛けたその人と結婚し

やがてその人はアル中DV夫と化し、

(子供の身に危険を感じた時点で必死に逃げて離婚しましたが)

お酒を飲んでは妄想を膨らませ、

いわれのない濡れ衣を着せては

コップの中で見たのと同じポーズと表情で

怒りまくり、

エスカレートすると、殴るは蹴るはで…。

*****

いや、変な話をしてしまい、すみません。
でも、そいつのキャラのことは置いといて~っと。

この話のツボはというと、

今なら分かるんですけどね…。

見える系」の人と話していると、
皆、「人それぞれ見え方が違う」って言うんですよ…。

でもね、

当時は「見え方が違う」という表現の中に、

「マンガに見える人もいる!」


なんてぇのも含まれているとは

よもや思わなかったよー!>爆!


と言いたかっただけなんです。

なんだかブラックジョークっぽくなってしまいましたが、
本来は
「ド」が付くレベルの「笑える話」です、マジで!

*****

私が二十歳の頃老女だったその人は、無論もういないでしょうが、
魔女は排出され続けているようなので、

ブラジルって、やっぱり

不・思・議!

不思議好きの方は、チャンスあらば
是非ブラジルへもお運び下さいね♪

お読み頂き、誠にありがとうございました!

夜間飛行 魔女と黒猫

※ 「夜間飛行 魔女と黒猫」はこたつぶとんさんの作品です。



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