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「何もしない」大型連休後に襲ってきた「だるさ」について

大型連休が終わったと思ったら、木曜~金曜日の仕事を経て週末の休みへ。何と表現したらいいのでしょう、いまの「だるさ」を・・・・。

例年であれば「何もしない大型連休」というのはあり得ません。しかし、今年は新型コロナによって動くことができず、せいぜい自宅の周辺を散歩したりスーパーに買い物に行くぐらい。普段は人が少ない近所の公園にちょっとした「密」ができていて、特に小さなお子さんがいるご家族は大変だろうなあと思ったり・・・。

ことしの大型連休中は全国の高速道路で10キロ以上の渋滞は発生せず、死亡事故もゼロだったとのこと。航空会社は先月29日~5月6日の利用実績を発表しましたが、国内線の旅客数は前年同期に比べて95%減、国際線は98%減でした。「歴史的な大型連休」だったことが分かります。

私自身のことに戻ると、倦怠感に悩まされ続けています。考えてみれば、これまでは混雑が分かっていてもお出かけをしてきました。その疲労感を抱えながら「さあ、やるぞ!」と職場復帰するのがお約束だったのに、今年は蓄積された「かったるさ」を抱えてしまって、仕事が手につきません。体は疲れていないはずなのに・・・。

こんなことでは週明けから本格的に仕事を再開することができないので、パンチのあるジャズで「目を覚まして」みましょうか。フレディ・ハバード(tp)の「ローリン」です。

フレディ・ハバード(1938-2008)はハード・バップ、フリー、フュージョンと幅広く活躍した名手です。日本で人気なのは1960年代、ブルーノートやインパルスから発表されたストレート・アヘッドな諸作品か、1970年代のV.S.O.P.クインテット、CTIのスムースジャズ系のアルバムではないでしょうか。しかし、彼は80年代も充実した活動をしており、その様子がうかがえるのがライブ盤である「ローリン」なのです。

このアルバムは1981年、ドイツのヴィリゲンで開かれたジャズ・フェスティバルで収録されました。翌年にドイツのMPSからリリースされ、10代だった私は輸入盤店でジャケットを見かけたのを覚えています。「バイクに嬉しそうにまたがるハバード」という安直なデザインがなぜか心に残ったのですが、内容は聴いていませんでした。

それが2009年にユニバーサル・ミュージックから「レア盤」として再発され(しかもお安く)、懐かしくなって入手したところ、内容の充実ぶりにびっくりした次第です。特に1曲目の「One Of Another Kind」の出だしは強烈で、これを聴けばシャキッとすること間違いなしです。目を覚ましましょう。

1981年5月1日、ドイツ・ヴィリゲンでのライブ録音。
Freddie Hubbard(tp,fl) Dave Schnitter(ts,ss) William Childs(p,e-p)
Larry Klein(b,bass guitar) Carl Burnett(ds)

①One Of Another Kind
ハバードのオリジナル。冒頭からトランペット~テナーのホーンが切れ味鋭く迫ってきます。スピード感と強烈なノリが聴ける1分ほどのテーマのためだけでもこのアルバムを手に取る価値があると思います。テーマの最後、トランペットが放つフレーズはキレッキレでこれを受けてソロを始めるデイブ・シュニッター(ts)は一生懸命にならざるを得ないでしょう(笑)。しかし、シュニッターには悪いのですがここでの聴きものは何といっても次のハバードのソロです。パワフルでかつ集中力が全く途切れません。
私としてはこのソロに2つの聴きどころがあると思っています。一つは「全くぶれないロング・トーン」。ハバードのソロは最初から飛ばしているのですが、初めの部分は細かいパッセージが多くなっています。それがこのトラックの3分過ぎくらいから強烈なロング・トーンを披露します。これが非常にエネルギーに満ちていると共に、唇に相当な負担がかかっているはずなのに全くヨレることなく、爆発的なパワーで吹き切っているのです。この力強さ、本当にすごいです。そして、これだけのプレイをしたら冷静さを失いそうなものですが、3分28秒くらいのところでリズムの変化と共にサッとトーンを変え冷静な演奏に切り替えます。この「切り替えの見事さ」が2つ目の聴きどころ。ハートは熱いが構成は冷静、見事としか言いようがありません。続くピアノのウィリアム・チャイルズの低音を生かしたソロもかなりユニークですが、正直、ハバードの演奏でお腹一杯になってしまいました・・・・。

②Here's That Rainy Day
有名スタンダードをハバードがフリューゲル・ホーンで吹いています。冒頭、ハバードのみが吹くイントロからメロディに入りますが、ここが素晴らしい。温かい音色でゆっくりと、余韻まで意識しているかのように間を使ったプレイ。かなり遅いテンポで、一音を放つ間にも強弱をつけて色彩を描いているかのようです。ソロに入ってからテンポが上がり、ここからは力強さが出てきます。フリューゲル・ホーンであることを忘れてしまうほどクリアで強い音色。ラストではハバードだけのソロが用意されており、ここでも強弱つけたドラマチックな展開を聴くことができます。

いやはや、かなり心と体が「平常モード」に戻ってきた気がします。考えてみると、連休に「何もしないこと」って本来であれば十分あり得るのですが、やはりこの状態を「指示(要請?)されている」ことと「人との接触ができない」ことが大きいんでしょうね。せめてジャズの「熱さ」に接することで勘を取り戻したいところです。

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