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星空案内所*wishes(55)

第6章 儚き道しるべ

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次に真由ちゃんに会ったとき、私は迷わず手を振った。

「おはよー真由ちゃん!」

通路で通りかかった真由ちゃんは、伏し目がちにこちらを向き、ゆっくり小さく手を振り返した。

すると、私の声に気づいたらしいぴよた君が宇宙タウンから飛んできた。

「え?え?え?どゆこと?どゆこと?そゆことー?」
「はははは、何でもないよ?」
「いいなあ~俺も!まーゆちゃーん!俺ぴよた!って言います、よろしくたのんますー」

調子に乗ってぴよた君は、両手を掲げぶんぶん左右に振り、真由ちゃんに猛アピール。

朝から館内で堂々のはっちゃけぶり。お客さんが入る前で本当によかったと内心思った。

真由ちゃんは会釈だけして素早く去ってしまった。

「あれ?俺嫌われた?」
「うーん、そうじゃないと思うよ。早く戻ろう」

しょんぼり気味のぴよた君を、半ば強引にひっぱりながらタウンに戻るのだった。


誰かと話したり会うことだって、本当はとても勇気がいること。
ましてや話したこともない人に話しかけられたりしたら相当。
真由ちゃんの気持ちは誰よりも私がよく分かる気がした。


ちょっとずつでいい。
焦らなくていい。
ゆっくりと、自分なりのペースで進んでいけばいい。

私も辛い暗い過去のことを思い出すのは嫌だけど、あの時があったから今に続いている。
紛れもなく、今の私に。
そう思うことで前向きな気持ちになれた。


バイトの契約期間が残り僅かなことも分かっていたけど、今やっと掴み始めた青空を、一瞬たりとも見逃したくない。
そんな気持ちだった。


勤務時間が終わり、いつものように準備室でぴよた君とテテさんとゆっくり談笑している時のこと。

「おつかれさーん」
「はる姉!」
「おつかれっすー」

今日も一日満員御礼だった科学館。
ひっきりなしの接客だったのに、はる姉は疲れた顔など微塵も見せず、いきいきした表情。
部屋に入ってくるなり、慣れたように私の隣に座った。

「何か嬉しそうだね」
「ふふふふ。まね、ちょっと提案があって。聞いてくれる?」
「えー何何?」

ぴよた君は机に身を乗り出し、待ち構えた。

「だいぶ遅れちゃったんだけど。親睦会やろうかなーって。ほら、もうすぐペルセウス座流星群でしょ?それも含めてみんなで観測会しよっかなって。よくない?」
「いい!超いいじゃん、みんなでわいのわいのしながらついでに流れ星見ちゃうとか!盛り上がること間違いないっしょ!あ、でも場所って」
「あー私の家使っていいから」
「え、でも彼氏さんが」
「気にしなくていいよー、基本自由な人だから。むしろ歓迎するし」
「はる姉太っ腹ー、感謝します!」
「それじゃあ、参加しちゃおうか。私おのちゃんにも声かけとくわね」

テテさんは早速伝えに準備室を出た。

「やっほーい!楽しみだねーあいも」
「うん、そうだね」

とんとん拍子にあっという間に決まった親睦会。
みんなは当日の計画にノリノリだったけど、私は一人気がかりなこと抱えていた。
それはなおさんのことと真由ちゃんのこと。

絶対なおさんも参加するはず。
真由ちゃんも来てくれたらいいんだけど…。実際難しいだろう。

ぴよた君の言っていたように、わいのわいの出来たら本当にいいのだけど。


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