星空案内所*wishes(20)
第3章 マイナス等星
開館時間30分を過ぎてから徐々に客が増え始めた。
私達のいる宇宙タウンにも、家族連れが数人集まるようになり、賑わいを見せるようになった。
ぴよた君は持ち前のかわいい笑顔で元気よくお客さんに挨拶していた。
私はといえば笑顔を作れず顔をこわばらせていた。一度緩んだ緊張の糸も、客を前に再びぴんと張ってしまったからだ。だけど、ぴよた君に負けじと、今出来る限りの笑顔と声で振舞うよう努めた。
「こんにちは!」
父親に手を引かれながら宇宙タウンに入ってきた、真っ赤なほっぺがぷっくりした小さな女の子に挨拶をした。
すると、女の子は急に声をかけられ驚いたのか、今にも泣き出しそうに眉を寄せた。
「あ、ええ、と」
私は急いで笑顔を作り、なだめようとしたけれど、女の子はますます不審に思い、鼻を赤くして涙を流す寸前だった。
「ここみ、どうした?」
父親もしゃがんで女の子の頭を撫でていたが、泣き顔に困惑気味。
私はもうどうしたらいいか分からず、周りの視線が次々刺さる中、その場から動けなかった。
そんな光景に気づいたのか、ぴよた君は私達のいる場所まで小走りで駆け寄ってきた。
「こんにちはー!どうしたのかな?」
ぴよた君はすぐさま女の子の背丈まで屈み、緩やかな笑みで声をかける。
「ここはね、とーっても綺麗なたくさんのお星さんたちがね、上から僕たちをいつも見守ってくれてるんだよ。だから、何も怖いことはないんだよ。ほら、上を見てごらん」
ぴよた君は人差し指を天井へ差した。涙で濡れた顔をこぶしで拭きながら、女の子は天井を見上げた。
「あー、星がいっぱいある!」
見上げた女の子は見る間に花が咲いたように笑顔をこぼした。
私は何があったのかわからず、同じように天井を見上げた。
すると、そこにあったのは宇宙タウンの天井に、端から端までめいいっぱいに広がる、天の川だった。
驚きを胸の中で抑えながらよく目を凝らすと、絵の具だろうか、本当に小さいな星一つ一つが、黄色やら青やらピンクやら、色とりどりの色で丁寧に描かれてあった。
カラフルなのに決して派手さはない、それは宇宙の暗がりにふわっと明かりを灯す、虹の欠片のようだった。
ただ見上げるだけで、その場にいるだけで、あっという間にそこが宇宙に変わる。
架空ではあるけれど、現実に宇宙をすぐ近くで感じ取れる宇宙タウン。
ここはただ、好奇心をかき立てたり、学んだり、趣味を堪能したりするだけの場所ではないんだと、体全体で感じ取ったのだった。
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