「新!店長がバカすぎて」の感想

本書の概要

 以前私も紹介した、「店長がバカすぎて」の続編である。吉祥寺にある書店員(前回は契約社員で、今回は正社員)である谷本と、抜けていて仕事のできない店長の2人が軸となって物語が進んでいく。今回は、宮崎に移動していた店長が戻ってきたところから始まり、新しいアルバイトの女性や社長の息子などといった新キャラも加わり物語が進んでいく。詳細はネタバレになるので割愛します。

感想

「だから、さっきの大学生が夢想する未来の社会には、リアルの書店が存在していないっていうことでしょう? 書店が、書店員が存続し続けていく意味をあんたは語れるのかって聞いてるの」

早見和真:新!店長がバカすぎて.角川春樹事務所,p74.

なんとかいい本と巡り合って、お客さまに喜んでいただきたいと思うから、私たちはみんなこんなに給料が低くても歯を食いしばってがんばってるんじゃないですか。そんな現状に誰が満足してると思うんですか?

早見和真:新!店長がバカすぎて.角川春樹事務所,p112.

 上記の引用のように、今回は、色々なトラブルや、コロナウイルスの描写を通して、正社員となった谷本が「書店は何のためにあるの?」というジレンマに向きあう描写が散見された。相変わらず、目の前で起きていることに対して真っ直ぐ受け止められる谷原のキャラクターは魅力的で、それはお客さんなど、周囲の人にも伝わっている。

仕事にプライドを持っていて、働くことが大好きで、でもかつての私が持っていなかった抗う力を持っていて、闘っている。気がついたら、この子いいなぁって目で追っていたわ。

早見和真:新!店長がバカすぎて.角川春樹事務所,p138.

谷原は、普通の人であれば防衛規制として目を背けてしまうようなことにも真っ直ぐ向き合い、しっかり傷つき、その度に周囲を頼っている。その愚直なキャラが今回も健在でホッとしたのは確かだ。

 また、話の構成としても、前回と同様色々な伏線が張り巡らされていて最後まで本をめくる手が止まらない。そして、周囲のキャラクターが魅力的なのは相変わらずだ。特に今作は店長についても深掘りされていて、店長ファンの自分としては大満足で合った。
 2冊目なのに全く飽きが来ないし、面白さも劣化していない。本書が発売されてからまだ1ヶ月も経っていないようだが、もう続編を期待している自分がいる。
 主人公の真っ直ぐさや周囲のキャラクターの魅力、シリーズものとして続いていることから、個人的にはドラマ「ナースのお仕事」に似ているものがあると感じる。なので、シリーズとしてまだまだ続いてほしいという期待ももちろん、ドラマ化などをしても面白い作品になると思うので、本シリーズに関しては色々な期待をしてしまう。本シリーズ、とっても応援しています!

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