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逆噴射小説大賞2023 個人的に好きな作品

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#SF

羽音

「わたしが死んだ時、蠅の羽音がした」
──エミリー・ディキンスン、465番の詩

 乾いた風が吹くと、まず崩れるのは眼球だという。

 私は目を細める。茫漠とした砂塵の彼方では、天衝く排気塔から煤煙が吐き出されている。
 昼夜を問わず稼働し続ける火葬場。熱と灰が無尽蔵に供給され、大気をさらに脱水していく。

 視線を移す。老人が死んだ幼子を抱いている。子の盲いた眼窩には黒い虚があるだけだ。

 も

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地球泥棒を追え!

地球泥棒を追え!

 扉を開けると月面だった。
 反射的に閉める。
 もう一度、恐る恐る開ける。
 黒い空、灰色の荒野、立ち尽くす星条旗。写真でしか知らなかった光景が、廊下の代わりに広がっていた。

「輪郭が、異様にはっきりしてる」
「空気が無いからだ。可視光を邪魔するものがないのさ」
「でも普通、生身で宇宙に晒されたらただじゃ済まないと思う」
「こちらの技術力の賜物だ。そもそも現在の地球の方が、余程普通からかけ離れ

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