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D.D.G.

9
情報が全ての世界。生きたい少女と殺したい青年が一心同体ならぬ違心同体、二人三脚ならぬ二人四脚で征く、サイバーパンクバトル小説。
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#小説

D.D.G. -Hope to Live, Want to Kill- (Sequence 9.)

D.D.G. -Hope to Live, Want to Kill- (Sequence 9.)

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Sequence 9:"D"ragged "D"own by "G"irl. 戦いの火蓋が切って落とされた。
 その瞬間、元下層の住人――現上層の手先が全員、駆け出す。
「壮観だなァ!」
 報炉は笑う。実に愉快そうに、実に爽快に。
「なァ! そう思わねェか! 烏合の衆共!」
「テメェッ!!」
 淡落が再び怒号を浴びせる。だが報炉にとってはどこ吹く風だ。
「俺様に怒ってる場合かよ? 

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D.D.G. -Hope to Live, Want to Kill- (Sequence 8.)

D.D.G. -Hope to Live, Want to Kill- (Sequence 8.)

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Sequence 8:Open Fire.

***

「……承知しました。……はい。では、宜しくお願いします」
 ツー、ツー、という通話切断後のトーン信号が、小柄な男の頭の中で鳴り響く。それを確認し、首に刺さっていたコードを抜く。手を離すと、巻尺の要領でコードは壁へと吸い込まれていった。
 壁の中に完全に収容されたのを見てから、彼は「やっとだ!」と快哉を上げた。隣にいた大柄な男も

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D.D.G. -Hope to Live, Want to Kill- (Sequence 7.)

D.D.G. -Hope to Live, Want to Kill- (Sequence 7.)

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Sequence 7:Crows' Claws. 生存の存続という点で、隣人は敵になり得る。
 狩猟採集を行なっていた時代は村同士が啀み合ったし、その村が巨大化して都市国家、ひいては国民国家となってもそうだった。反対に、その国家の中の小集団や個人にフォーカスしても、小競り合いや争いは繰り広げられている――自らの快適な生存を実現する為に。
 それはこの、下層においても同じ事だった。

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D.D.G. -Hope to Live, Want to Kill- (Sequence 6.)

D.D.G. -Hope to Live, Want to Kill- (Sequence 6.)

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Sequence 6:Not Acknowledge. 戦に必要なのは、まず自らの戦力を知る事だ。
 『彼を知り、己を知れば、百戦殆うからず』という有名な言葉には『彼を知らずして、己を知れば、一たび勝ちて、一たび負く。彼を知らず、己を知らざれば、戦う毎に必ず敗る』という続きがある。要は己の戦力を知らなければ、どの程度の敵ならば相手に出来るのか、またどの様な手法が取れるのかを計画する

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D.D.G. -Hope to Live, Want to Kill- (Sequence 2.)

D.D.G. -Hope to Live, Want to Kill- (Sequence 2.)

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Sequence 2. VS "Gun"tleman. 地面を蹴り疾駆する絡生は右手の第二関節を折り曲げ、ばきり、と殺意を音に乗せる。対するフィラロは避ける動作も取らずその場で発砲。報炉の頬を、弾丸が掠める。
 雑に狙って外したと思ったのか、報炉は走りながら嘲笑する。
「ぎゃはははははっ! おいおいおいおい、銃の扱いが初心者過ぎるぜ! 俺が逆に教育してやろうかァ!?」
 安っぽい挑発

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D.D.G. -Hope to Live, Want to Kill- (Sequence 1.)

D.D.G. -Hope to Live, Want to Kill- (Sequence 1.)

Sequence 1. Worst Buddy.「げ、えっ……!」
 少女絡生の喉からゲロが落ちる。朝に食べた不衛生なパンの欠片が点々とするそれは、廃墟に行手を阻まれたスラムの路地裏を更に汚していく。
 彼女の横には、アタッシュケースを持つトレンチコート姿の男2人。彼らは自身の首筋に刺さった記憶端子を抜いた。一瞬、非人間的な接続口が見えるが、すぐに肌色の蓋で閉じられる。
「下層のゴミが」
 男は唾

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