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【いのちの炎】

産まれて初めてこの目でしっかりと母乳が出る瞬間を見た。それも自分の体から。

やさしく強く摘むと無色透明の、一粒の雨と同じ量の液がさらりと出た。片方からも同量に。透明の液と、ヨーグルトのかすみたいなのが混ざった液体がこの身体から溢れた。

その光景を見て私はとてもショックを受けた。「私は妊娠などしてないのに、どうして」と。だけど原因は分かっている。抗うつ剤の副作用だ。

産婦人科の先生にお薬手帳を見せたところ、「一度、分泌に関して異常がないか検査しておきましょう」と説明を受け、血液検査をした。

病院を出て家に帰るまでに、お風呂上がりはいつもタンクトップが少し濡れていることを思い出した。お風呂に入る前に「出てはない」と確かめるために私は摘んだ。すると予想に反して母乳が溢れ出た。

私はただ「出ない」ことを確認して安心したかったのかもしれない。しかしその行動が裏目に出てしまった。

十分に就活も出来ず、4月からは同級生の群れから離れて生活している私は孤独に悩まされている。そして今回のことも周りの子とは違う日常だ。

どこまで私を孤独に落とし込めば神様は気が済むのだろうか。そう考えても答えは出ないのが辛い。


妊娠もしていない、まず相手すらいない処女の身体から出た母乳。少しショックな出来事だったが、出た瞬間はなぜか神様に複数の人の中から一人選ばれたような気分だった。原因はただ薬の副作用とわかっているけれど、それを上回る神秘なものを感じた

「ここから何か生まれるかもしれない」その何かがよく分からないけれど、そう強く思った


母乳が出た時はどう頑張っても変えられないこの事実に、悔しくて、辛くて、涙が溢れる。情けなくて、惨めで「恥ずかしい。もう死んでしまいたい」と強く思った。

だけど私は死ぬ勇気なんて、一ミリもないと気づく。「もしかしたら明日はいい日になるかもしれない」と僅かな期待があるから死ねない。その欲の深さと、どんなに辛くても、消えたいと思っても、死ねないのが自分なのだと分かった。


今回の件で改めて多方面から人間や生命の力強さを学んだ。

誰だってみんな強い。その強さに気づいていない人が多いのかもしれないね。

命の炎が燃え続ける限りはその火を絶やさずに大切に生きたいと思う。どんなに逆風が吹こうとも人は生きていける。なぜなら今日という嵐の中でもあなたは命の火と共にやさしく、強く生き抜いた人なんだから。

どんな孤独もあなたに勝てない。だから安心して。明日もきっと生きていけるから

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