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キッズキッチンレター1月号

広島というと真っ先に出てくるのが原子力爆弾が爆発した場所です。小さなころから、大叔父さんに聞かされて来たのが原爆のお話。軍人だったおじさんが、爆弾が炸裂した後に広島に行ったのだそうです。そしてまだ放射線が強かったので被爆し、原爆爪が生えてきたと言ってその爪を見せてくれました。そしていつか広島に行ったら原爆資料館に行きなさい、と小学校に上がる前から言われていました。「火傷していて水が欲しいと言う人に水をやってはいけない。死んでしまうから」など「恐ろしくて、そんな日が来ない方がいいな」と思うような知恵をくれました。小学校高学年になって、広島に行く機会がありました。当時の原爆資料館は今よりも子どもにとっては恐ろしい場所で、皮膚の垂れた蝋人形が今も目に焼き付いています。「姿もそうやけど、匂いもすごかったんやで」と叔父が言うのです。小学校で教科書で原爆のことを習って、そして資料映像を見ました。もう恐ろしくて夢にまで見るほど。街のことは一切覚えていませんし、食べたであろう食べ物のことも何も覚えておらず、おじさんと行った原爆資料館の思い出だけがありました。

 大人になって、仕事で広島に行くことになりました。まだ怖気付いていましたが、行ってみたら、当たり前ですが「普通の街」です。人々が住み、生活をして、買い物をする、私たちの街と何ら変わらない街でした。それどころか瀬戸内で同じようなのに、同じ材料でも全く違う食べ物がありました。お好み焼きが大きな違いです。神戸や大阪はキャベツを生地に混ぜて焼きます。広島は生地をガレットのように焼き、キャベツを乗せ、麺を乗せ、丁寧に焼いて行くお好み焼き。ソースも地元のがいいのだとか。
広島を代表する野菜といえば、広島菜で、江戸時代参勤交代の折り安芸の人が京都からタネを持ち帰ったのが始まりと言われています。漬け菜の一つで、野沢菜・高菜と合わせて日本三大漬け菜と言われているそうです。現在では広島だけではなく全国で作っているのだとか。漬け物ですが極浅漬けで食べるのが良いそうで、漬けてすぐをいただきます。
今月は牡蠣の時期に合わせての広島県の教室だったのですが、偶然、広島菜の季節にも行き当たり、まだ漬けていない生の広島菜もお送りいただき、長さ50cm以上、太さ白菜なみという大きさに驚きました。そしてつけてしまうと、大人の拳1つ分ぐらいに、とても小さくなるのにもまた驚きました。辛味があるので汁をちょっと絞ると辛味が抜けます。

 そして今回の教室では使えませんでしたが、中国地方は春菊も独特です。おたふくという切れ目のあまり入っていない丸っこい葉っぱの春菊です。関西や関東の春菊とは同じような匂いで見た目が大きく違います。中国地方に行ったら確かめてみてください。鍋に向く、さっと火が通って美味しい品種なのだそうです。

今は広島市は恐ろしい出来事があったことが全くわからないような素敵な街で、だからこそ原爆ドームや資料館は続けていかなければならないと思わされます。美味しさをいっぱい食べに行きたい街です。

キッチンレター2


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