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協業関係者にプロ扱いしてもらうためのコミュニケーション法

読者の皆様が組織内の関係者、もしくは社外のパートナーと組んで大きなプロジェクトを動かそうという場合に「なんかいつも自分の立場が弱くなってしまう」「一人前扱いされない」「自分の価値が出せていない」と感じることはありませんか?他方、周りを見てみると、同じようなことをうまく要領よくこなしてプロとして信頼を得ている人もいる、となったときに、「自分とその人は何が違うのか?」と考えさせられてしまうことがあるかもしれません。

この記事では、そのような状況の時にどういった視点で自分を見直せばいいかを、体系的で理論的な話というよりは現場での日頃の観察や経験から見て優先度が高くすぐに役立つ話を中心にまとめてみました。この記事の例ではマーケティングをメインで取り上げていますが、マーケティングに限らず応用が効きます。


どうして自分はプロに見られないのか?専門知識の獲得より重要なこと

「自分がプロとして見られない」という状況は、たいていの場合、プロジェクトの初期から発生します。組織内外の協業関係者との合同プロジェクトで部門間、担当者間の関係が "いびつ" な形で始まってしまうことが良くあります。

マーケティング部門と営業部門の間であれば、たとえばマーケティングが商談生成をして営業に貢献するはずのイベントの企画で営業から「しょうがないから企画を手伝ってあげる」と思われてしまったり、顧客のニーズ調査で潜在需要を掘り起こす際に「無駄な調査は最小限にして顧客の手を煩わせないようにしてほしい」と言われたり、営業と社外のパートナーとの間では、パートナーを支援するためのプログラムや協賛金を営業が頭を下げてパートナーが「しょうがないな」と言いながら使ってもらう、などです。

本来はメリットを提供しているはずなのに、相手からは迷惑をかけられているように思われ、立場が逆転しています。このような関係性は、端から見ると「どうしてそうなるの!?」と "滑稽" にも見えてしまうのですが、この状態は自身が「プロフェッショナル」としての関係性を築けていない一例です。

その道のプロフェッショナルとなるために、今流行りの「リスキリング」を行い、マーケティングの専門知識講座を受講したりMBAに必要な知識を身に着けたり、といったことに走りがちです。しかし、実はプロとみられるためにこのような専門知識の習得よりも重要で優先度が高いことがあります。それは「話の持って行き方」です。

巷では「話し方が9割」という本が流行っていますが、今回の記事で取り上げるテーマも似ているところがあって、まさに「話の持って行き方が9割」なのです。効果的な話の持って行き方を身に着けることで、専門知識については走りながら裏で身に付けていき辻褄を合わせることが可能です。逆に、いくら専門知識をつけるトレーニングを受けても、話の持って行き方が間違っていると、いつまで経ってもプロと見られることはありません。

実際に現場で散見される過ち3選

私も長年マーケティングと営業の現場で前述したような "滑稽" な状況を目の当たりにしてきました。このような状況はごく稀にしか起こらないのかというと、実は起こるところでは結構な頻度で起こっています。自分がプロとみられない状況がどうして起こってしまうのか、色々なケースがあるとは思いますが、担当者レベルでよくありがちで原因がはっきりしている過ちを3つ取り上げてみます。

自分の責任範囲を相手に投げない

まず一つ目は、相手に最初に依頼を掛ける際に、本来自分たちで実施しなければならない責任範囲の仕事を相手に依頼してしまうことです。たとえば商品部門が営業部門に「自分たちの商品の強みが何か」を聞いてしまう、マーケ部門が営業部門に自分たちのイベントのキーノートセッションのシナリオ選択と決定を委ねてしまう、アカウント営業が外部のパートナーに自分が担当している顧客の情報を聞いてしまう、などです。

これらのことを依頼されると、受け取り手は「自分たちの作っている商品の強みも知らないで担当しているの?」「イベントコンテンツって本来マーケティングの仕事じゃないの?」「自分で担当している顧客のことも知らないの?」と依頼主の能力について疑心暗鬼になってしまいます。

尚、ここまで明確なやり取りでなくても、よく考えると「自分の責任範囲を相手に丸投げしている」ケースが良くあります。自分自身が担当でなくても、相手部門/相手組織から見て大きな意味で自分側が責任範囲として担当していること、つまりたとえば同じ本部の別の部で担当している、とか社外の人との相対では自社のどこかで担当している人がいることも含まれる場合があります。

ここで、私は「自分の責任範囲を相手に依頼しては絶対にいけない」と言っているわけではありません。プロジェクトによっては情報がない、関係者とのリレーションがない、など条件が整っていない不利な状態から始まることも多くあります。その場合、何等かの形で情報提供や踏み込んだ支援を求める必要があります。

その際には、いくつか「プロの聞き方」がありますが、たとえば、まず「自分で出来る限りの仮説を作ってその検証を依頼する」という形を取れるようであればこれが効果的です。相手に依頼する前に自分たちで出来ることはやってみる、という姿勢を表すことです。

先ほどの例であれば「自分たちが思っている商品の強みはこうだが、これを実際のお客様で検証したい」「キーノートのシナリオ候補が2つあってそれぞれメリット/デメリットはこうで、シナリオ2の方がお勧めだがどう思うか?」「顧客について分かっていることはこうだが、他に分かっていることがあれば教えてほしい」といった具合に、オープンクエスチョンで丸投げするのでなく、相手が応える必要がある範囲を出来る限り限定する形で依頼します。(※仮説の内容があまりにも期待値からかけ離れていると相手から能力を疑われてしまうので、ある程度近い仮説を立てられる能力と情報はあらかじめ必要です。)

加えて、情報がなかったりリレーションがないなど、自分たちの責任範囲においてプロジェクト上の大きな課題がある際には、課題を分析し、それを自分が客観的に認識していることを相手にも伝えることも有効です。状況は良くなくても、それを課題だと認識して解決に向けて動き出そうとしているという姿勢を示すことができます。

また、「最終的な意思決定の責任者は誰か」も重要です。プロは意思決定の責任を自分たちで持ち、相手には決定を委ねずに意思決定をするための情報提供を依頼する、という形を取ります。決定を相手に委ねてしまうと、ただの伝書鳩、もしくはただの外注先、と思われてしまいます。

これらのことはすべて、自分が仕事全体の最終防衛線であり自分が崩れたら仕事全体がダメになる、という姿勢を出す、いわゆる「ラストマンシップ」(今の時代は「ラストパーソンシップ」というのでしょうか)と言われるものです。

枝葉末節(手段)から入るのではなく全体像(目的)から入る

二つ目、協業関係者に依頼をする際に、どうしても直接的な依頼事項の細かい話にすぐになりがちです。しかし、特に初回はそもそもなぜ (Why) このプロジェクトを実施するのか、という大上段からの説明を行うことを心がけます。たとえば、会社のプロジェクトであれば、年間事業計画や、場合によっては会社のパーパスなど、会社として掲げているより大きな目標と結び付けて「なぜ」を説明しましょう。

参考記事:

マーケティングであれば、たとえばイベントを企画する際に、そもそもイベントは事業計画を達成するための枝葉末節な "一施策" に過ぎません。このイベントは「なぜ (Why)」行うのか、「なに (What)」を達成するのか、をまず共有して合意を得ましょう。

また、キーノートなどのセッションを作るにあたっても、登壇者やセッションの内容、セリフなどを決める前に、セッション全体として達成すべきこと、伝えるべきメッセージをまず決めてから細部の議論をしないと、その場の雰囲気や人の好みに左右された意思決定となったり、レビューのたびに内容が変わったり、と協業関係者にも大変な手間と時間をかけさせることになり、プロとしての評判を下げてしまいます

また、関係者によっては依頼者の役割や責任範囲を理解していない場合があります。たとえばマーケティング部門はどこまでのタスクを行いどこまでお金を何のために出してくれるのか、ということです。必要に応じて初回の説明でお互いの部門の理解を図っておくこともあとで重要になってきます。

相手の立場や考え方を取り入れた内容にする

三つ目、これも基本中の基本なのですが、意外と忘れがちになるのが、相手の立場になってのコミュニケーションです。協業相手の立場や考え方についての基本的な知識が必須になります。たとえば、自分が組織内で達成しなければならない目標の話ばかりして、そのために相手に依頼が来ていると思われてしまうことは絶対に避けなければなりません。

「相手の立場や考え方」を踏まえていないと捉えられてしまうと、「あいつは我々のことを分かっていない」「自分のメリットのためだけに動いているやつだ」と思われ、協業仲間と認定してくれなくなってしまいます。

個人のレベルでなく組織的にこれを補強するには、特定部門や協業先についての「専用窓口」になる担当者を設ける方法があります。その関係者とは、常にこの窓口担当者を通してコミュニケーションし、窓口担当者に協業先について深く理解する専門性を身に着けてもらうことで、相手の立場や考え方を常に考慮したやり取りをすることができます。

参考記事:

一本の双方向なコミュニケーションであることを確認する

また、前述の担当者レベルの留意事項に加えて、組織として一番気を付けなければならないことは、ひとつのアジェンダのコミュニケーションに対して窓口を統一し、かつ一方的に依頼するだけではなく常に相手の反応についてフィードバックをもらえる体制にしておくことです。

よくありがちなのが、ひとつのことについて担当者Aから協業先にコミュニケーションしていたことに対して、別の担当者Bからも協業先にコミュニケーションをしてしまうことです。協業先からすると、担当者Aが代表者だと思っていたのに他の担当者が登場すると、担当者Aには代表権限がないと捉えてしまい、担当者Aの権威が著しく低下してしまいます。

時間がないときや事件が起こった時こそ遵守

前述したような担当者レベル、組織レベルで気を付けるべきルールについては、常に意識しながら協業関係者とやり取りする必要があります。普段は出来ているよ、という場合でも、締め切りが迫っている施策で協業する場合や、事件への対応など緊急時の場合には忘れてしまいがちになります。

プロとして評価されるためには、相手からプロの基準となる期待値を常に上回る必要があります。時間がないときや緊急時にこそ、前述のルールを遵守することで相手からのプロとしての信頼を得ることができます。

この記事の内容が、読者の皆様のプロジェクトを進める際の一助になれば幸いです!最後までお読みいただきありがとうございました!では、また!

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