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文化庁の支援事業について思うこと。ミュージシャンがもっと本気出してやるべきこと。

文化庁の文化芸術活動の支援事業について、かつてアマチュアのバンドマンだったものとして、また現在音楽クリエイターとして活動していて思うところがあったのでつぶやいておきます。

前半は文化庁の支援事業について思うこと、後半はミュージシャンがもっと本気出してやるべきことについて書いています。

思ったことを勢いで書いてるフシもあるのですが自分としては前半・後半つながっていることだと思うので、ちょっと長いけど最後まで読んでもらえるとうれしいです。

ARTS for the future!

現在、文化庁によって展開されている支援事業「ARTS for the future!(コロナ禍を乗り越えるための文化芸術活動の充実支援事業)」では、団体やイベントの規模に応じて600万円〜2,500万円の支援を受けることができます。

対象は事業として活動している団体(公演等の開催に資金面での責任を持つ者)なので、ミュージシャン個人が直接支援を受けるのは難しそうですね。

概要を読んでいくと、どうやら「事業を実施する団体を通じて実演家やスタッフに支援が届くことを意図している」とのことです。

ようするに「イベンターやライブハウスがミュージシャンを集めてイベントを開いてギャラを支払ったりとか、ダンスパフォーマンスや演劇などのイベント用の音楽制作を作曲家に依頼してギャラを支払ったりとか、そういった2次的なカタチで経済的な支援になりますように」と言うことでしょうか。僕にはそんな感じで読み取れます。

いろんな人と協力してイベントを開催するなどやりようはあるかもしれませんが、それでもまぁ届かないところには一切届かないわけですね。

文化芸術活動の継続支援事業

令和2年度に実施された文化庁の『文化芸術活動の継続支援事業』では対象者は20万円~150万円の支援を受けることができました。このときは間口が広く同人活動などでも対象でしたが、最終的に申請を通すためには前年度の確定申告書の提出が必要でした。

つまり対象は「音楽活動による収入があってきちんと確定申告している人」であって、「精力的に音楽活動しているけどそれによる収入がなく確定申告をしていない人」は支援対象ではなかったんです。

コロナ禍で困っている文化芸術活動者に対して政府なりに救いの手を差し伸べてくれているわけですが、この予算は税金から捻出している以上誰にでも支給というわけにはいかないため、ある程度の線引きが必要となります。

音楽イベントなどが激減して活躍の場を失っている音楽家も多いと思いますが、この線引きによって支援の対象外となってしまっていた人もかなり多いはずです。

音楽を趣味としてやっているか・プロとしてやっているか?の線引きってけっこう曖昧なんだけど、現実的にプロの実演家やクリエイターとして認められて国からきちんとした支援や補助を受けるためには、きちんと音楽活動での収入があって確定申告していることが必要なわけですね。

特に会社に所属せずに個人やグループなどでインディペンデントな活動をする場合、守ってくれる後ろ盾はありません。(もちろん会社に所属していても後ろ盾してくれるとは限りません。)

なので「音楽でがっつり稼ぐ」とか「メシを食う」とまでは言わずとも、やはり音楽家もお金や仕組みのことをちゃんと理解していた方が良いです。

ミュージシャンも金融リテラシーを高めよう

音楽専業でやっている人は当然しっかり確定申告して納税していることと思いますが、仕事をしながら音楽活動をしている人も音楽活動を副業として確定申告をするべきです。

具体的に言うと「サラリーマンやフリーターなど給与所得を得ている人で、その年の副業収入が20万円以上になる人」は確定申告をする必要があります。

「なんでわざわざそんなメンドクサイことしなきゃいけねぇんだ!」と思う方もいるかもしれませんが、確定申告をしないことで逆に損している可能性も高いのです。

音楽活動に必要なソフトやハード機材、楽器、交通費などはもちろんライブ用の衣装代や、自宅の1室を作業部屋としている場合なら家賃の一部など、かなりたくさんのものが経費として計上可能です。(※社会通念上相当(常識の範囲内)という前提ではありますが)

これを踏まえたうえできちんと確定申告を行うと、払いすぎていた税金が返ってきたり、税金が安くなったりします。赤字でもいいんです。やっておいた方がお得です。

さらに今後また文化庁が支援事業を行った際には、申請できる条件をひとつクリアできるわけです。このような理由から「確定申告はやっておいた方が良い」というのはご理解いただけたかと思います。

【参照記事】

バンドマンは金融リテラシーまじでゼロ

これは10代半ばから20代半ばくらいまでのあいだ、地下でパンクバンドをやっていた自分自身に向けて書きます。当時の僕は金融リテラシーゼロだったし、マジでお金も全然なかった。(おまけに人としてもまるでダメ男だった)

僕が知るかぎり小さなライブハウスでライブをするアマチュアバンドの8割は「チケット売り上げでメンバーに報酬を払う」どころかむしろ「練習するスタジオ代、会場代やチケットノルマをライブハウスに払う支出でマイナス」の場合がほとんどでした。

お客さんがたくさん来てくれたときは若干プラスになることもありましたが、当然バンドは複数人でやってるからメンバーで分けたら収入と呼べるような額には到底なりません。

対バンの人たちもアルバイトや会社員をしながらバンドをやっている人がほとんどで、それなりに有名なバンドのメンバーでもバイトしながら活動しているという話はしょっちゅう耳にしました。

◆ちょっと余談
余談ですが、僕のやっていたバンドが主催で地元のライブハウスで海外バンドの来日ツアーをサポートしたことがありました。

ライブ終演後、ライブハウスの外に出たら大学生くらいのお客さんたちに「めちゃくちゃよかったっす!」と声をかけられて音楽トークで盛り上がってるところに、うちのバンドのメンバーに「(会場代とチケットノルマの)清算だよ!」と呼び出されたので、「ちょっと用事があるから行くね、ありがとね!」とお客さんたちに声をかけてその場を立ち去ると、その子たちが「え、あのバンドでもギャラもらってるんじゃなくてお金払ってるの...?」と話しているのが後ろから聞こえたのをよく覚えています。

たぶん彼らもバンドマンだったんじゃないかと思うけど、夢を壊すようなことをしてしまって申し訳なかったなぁとふと思い出すことがあります。。

実際、精算でライブハウスの箱代と海外バンドへのギャラを払ったらプラマイゼロか若干マイナスくらいだったので経済的には夢もクソもないですけどね。。笑

「バンドマンはお金がない」のには理由がある

僕はライブハウスで働いたことはないですがバンド活動を通じて近くで見ていて思ったのは、ライブハウス側も『お金はないけど夢はあるバンドマンたち』からお金を徴収することでどうにかお店を運営できているのだと思います。

街の小さなライブハウスのお客さんはライブハウスを利用するバンドとそのお客さんです。彼らがライブに出演するために払う会場代やチケットノルマと、そのバンドのお客さんが飲むドリンク代が主要な売り上げになっているはずです。

たまに有名なバンドもツアーで回ってきたりして「チケットがソールドアウト、お客さんパンパンでドリンクもバンバン売れるお祭り状態!」ということもあるでしょうが、それも毎日・毎週末というわけにはいかないでしょう。

なので普段はブッキングライブと称して、夢見るアマチュアのバンドマンたちを5バンドくらい集めて、ひとバンドあたり2~3万円のチケットノルマ(チケット1枚1500円×20枚分とか)を徴収して営業してるわけです。

※ちなみにチケットノルマとは「ライブハウスまたは興行主が出演者に課すチケット代金」のことです。出演者がお客さんにチケットを売れなかった分は出演者自身が払わなくてはなりません。(小耳に挟んだ話では役者さんとか芸人さんも小劇場で講演をする際にこういうシステムがあるらしいですね)

このようなシステムの中で経験を積んで仲間を増やし切磋琢磨していき、音楽的にも人間的にも魅力のあるひと握りのバンドたちが活躍して、さらにその中のほんのひと握りの人たちがブレイクしていくのです。

今ここでライブハウスの運営システムを批判するつもりはないですが、正直バンドマンの負担はかなり大きいです。

それでもなおこのような活動を続けるのはなぜか?というと、みんな「それが普通」「そういうものだ」と思っているからです。だからバンドマンはお金がないんです。

音楽クリエイターになってから思ったこと

過去のnoteでも書きましたが、僕はバンドを辞めたあと個人で音楽クリエイターとして活動を始めました。

バンドの出張レコーディングやミックス、同期音源を制作したり、編曲や楽曲提供などとにかくいろんなことに挑戦してきて、現在はインストBGM制作をメイン業務にしています。

今ではバンドマン時代のバイトの給料の何倍も稼いでいますが、個人でこうした音楽の仕事をしていく中で気付いたことがありました。

それは「プロになりたいなら自分の収支を把握する必要がある」ということ。

音楽的な技術や知識・経験はもちろん重要ですが、活動を継続していくためにはお金は必要不可欠です。でも、活動を続ければ続けるほどマイナスになってしまうなら継続は困難ですよね。

「ただ純粋に趣味でやっているからいいんだ!」という人ならそれでもいいけど、もし心のどこかに「プロになりたい」「きちんとギャラをもらえる音楽の仕事をやりたい」という思いがあるなら、収支がプラスになるように活動していくべきです。

でも、僕がバンドマンだった頃はその視点がスッポリ抜けていました。むしろバンド活動でお金をもらうことにどこか後ろめたさすらありました。「音楽でお金を稼ぐ」ということに対して自分で勝手に心の枷をつけていたんだと思います。

そのあと個人で音楽クリエイターとしていろいろとやっていく中で「これはめちゃ大変だったから次から無料じゃ引き受けられないな」「これはすごく時間も労力もかかるからこの金額じゃできないな」という試行錯誤を繰り返していって、ようやくこのことに気付くことができました。

バンドマンにしろ音楽クリエイターにしろ、プロとして継続的に活動していきたいのであればきちんと考えて収支のバランスが取れる活動を行うべきだったんです。

正直、バンドマン時代にこういうことを教えてくれる先輩や大人はひとりもいませんでした。

収支を把握・管理しよう。収入があるなら確定申告しよう。

実際ミュージシャンやバンドマンで自身の音楽活動における収支のバランスを把握・管理しつつ、しっかり収入を得て確定申告をしている人はかなり少ないんじゃないかと思います。

たとえば「ライヴハウス出演とかCDやグッズ販売などでそれなりに収入を得ていても、トータルすると収支マイナスなので確定申告はしていない」というミュージシャンもけっこういると思います。

でも、それだと冒頭で触れたとおり文化庁の支援事業の対象にはならないんです。しかも確定申告をしていないせいで、本当は払う必要のない税金を払っているかもしれません。なので収支をしっかり把握するために記録しましょう。そして収入が一定以上あれば確定申告をしましょう。

というか、むしろ音楽活動で一定以上の収入を得て確定申告をするところまで持っていきましょう。これがプロになるためのファーストステップです。

活動で収入が発生していれば、その分バイトを減らして音楽に打ち込む時間を増やすことができます。その時間でより一層スキルを磨いたり知識を深めたりすることができます。

そして今よりワンランク上の機材や楽器を買って、きちんと必要経費として計上して確定申告をしましょう。その機材はあなたの音楽活動に必要なものだからです。一時的に収支は赤字になってしまっても、あなたの活動をブーストしてくれます。(節税対策にもなります)

最初は収入が少なくて赤字でも、将来的に収支がどんどん上向いていって音楽でしっかりメイクマネーできるようなミュージシャンになりましょう。

政府や会社や組織に頼らずとも自力で生き抜いていけるような力と知識を身につけましょう。

そのためにも、

・音楽活動の収支をしっかり把握する
・収支をプラスにしていく
・確定申告する

この3つのことをミュージシャンはもっと本気を出してやるべき。専業でも副業でも同じ。

おわりに

それでは本日のつぶやきはここまで。最後まで読んでくださってありがとうございました!

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